TOC FAQ

皆様方からよくお寄せいただくご質問の数々をご紹介いたします。(順不同)

FAQ1 制約資源が二つあったらどうしたらよいのでしょうか

例えば、2種類の製品P、Qを生産するとして、製品Pを1単位作るのには工程Aで4時間、工程Bで2時間、工程Cで2時間の作業が必要だとします。

製品Qを1単位作るのには、工程Aで5時間、工程Bで5時間、工程Cで1時間の作業が必要です。しかし、それぞれの工程の最大稼働時間は工程A:30時間、工程B:2.5時間、工程C:12時間とします。また製品1単位あたりのスループットは、製品Pが5万円、製品Qが9万円だとします。

もし、それぞれの製品の需要に制限がなく作れば作るほど売れるとすると、工場の利益を最大にするにはそれぞれ何単位ずつ生産すればいいのでしょうか。

このようなケースでは、工程AもBの両方が制約資源となり、制約理論が適用できないように思うのですが、多分小生の理解不足なのだと思います。

ただ、一次関数を用いて解を求めると、製品Pを2.5単位、製品Qを4単位作れば利益は最大となることが分かります。

解答

「制約管理ハンドブック」(コックス、スペンサー、ラッセル社)の72ページに「よく受ける質問にたいする答」という節がありますが、そこをご覧下さい。そこには、「1. 二つ以上の制約があったらどうするのですか。」という質問に関して、次のように書いてあります。

「現実の状況では、特定の製品フローの中に、二つ以上の制約が存在することは、極めて稀です。二つの互いに影響する資源制約が存在する場合でも、普通、方針(例えば、ロットサイズの決め方、段取の順序など)により、資源間の従属関係が生まれてきます。滅多にありませんが、少数のケースで、製品フローの中に、真のインタラクティブな制約が存在する場合もあります。二つのインタラクティブな制約の問題を解決するには、論理的に見て、生産システムの中のどこに制約があるべきかを決定し、選択されなかったもう一つの制約を、キャパシティを高めるなどして除去するのが、最も容易な解決法です。高機能のスケジュール用のソフトウェアなしで、効果的にインタラクティブな制約を管理することは非常に困難です。」

つまり、コックス、スペンサーによると、頂戴した質問のような状況は、現実には、あまり起こらないことのようですが、それでも起こった場合、どちらかの制約資源のキャパシティを大きくして、制約資源を一つにして、ドラム・バッファ・ロープシステムの運用を容易にする必要があるといっているとおもいます。

ご質問の場合、制約資源は資源Aと資源Bですから、どちらかを大きくしてやります。

ご質問の問題の現在の最適解は、おっしゃる通り、下記のようになります。

  • 製品Pの生産量: 2.5単位
  • 製品Qの生産量: 4.0単位
  • そのときのスループット: 48.5万円

このとき、資源Aが、もし、あと1単位余分に使えるとすると、スループットは7000円大きくなり、49.2万円になり、また、資源Bが、もし、あと1単位余分に使えるとすると、スループットは11000円大きくなり、その場合、スループット総額は49.6万円になります。

いま、市場には十分な需要があるので、キャパシティを大きくする動機が存在します。したがって、ここで、TOCの5段階継続的改善のプロセスに沿い、キャパシティを高めます(ステップ4)。

どちらのキャパシティを大きくするかは、いろいろな側面を検討しなければなりませんが(例えば、生産現場での、ドラム・バッファ・ロープシステムの管理のしやすさ)、ここで、例えば、資源Bを6時間だけ大きくする(本当は5時間でよい)とします。そうすると、そのときの最適製品ミックスは、

  • 製品Pの生産量: 0.0単位
  • 製品Qの生産量: 6.0単位

となり、そのときのスループットは54万円となります。

このようなことが判ると、ここで、経営的な意思決定を行います。すなわち、資源Bを6時間だけ大きくするのに必要な追加的費用と、スループットの増加5.5万円(54万円-48.5万円=5.5万円)を比較し、そのような費用/投資のジャスティフィケーションが可能かどうかを判断します。

もっとも、これまでの顧客とのビジネスの観点から考え、一朝一夕に製品ミックスを変えられないでしょう。したがって、時間をかけて、「在るべき製品ミックス」に変えて行きます。その場合、販売員の業績測定尺度も変える必要があります。

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FAQ2 5段階継続的改善プロセスとはなんですか。(ソース:「制約管理ハンドブック」、コックス、スペンサー)

解答

5段階継続的改善プロセスは下記のステップから出来ています。

ステップ1. システムの制約を識別する
このステップでは、マネジャーは、プロセス・マネジメント分析を使い、全体システムのスループットを制限する資源を発見するためにプロセス・フローを調べます。単純な構造では、システムの制約は、長い待ち行列、長い処理時間を見ることで確認できるでしょう。

ステップ2. システムの制約を最大限に活用する方法を決める
このステップでは、業務が、さらに効果的に、かつ、効率的に行なわれるように、制約の持つ課題を修正し、再設計する意思決定を行う。

ステップ3. 他の資源についての活動をすべて、システムの制約に従属させる
このステップでは、管理者は、制約となっている資源、および、制約となっている資源に直接影響する資源の業績の改善に、全力を傾ける。

ステップ4 システムの制約を高める
このステップでは、制約の全体的スループットを増加させる(高める)追加キャパシティを調達する。

ステップ5 ステップ4で、制約が解消されたら、ステップ1に戻る。しかし、たんなる物ぐさによって、新しいシステム制約が生じることを許さない
このステップでは、進行中の改善プロセスを実行する。改善プロセスの結果、もともとの制約の改善が進むにつれ、別の資源が新しい制約として浮上してくる。こうして、いまや、新しい制約でシステムのスループットは制限されるようになるが、物ぐさは、新しい制約の改善に要するステップをマネジメントに見えなくする。

ゴールドラットは、これらのステップを別な表現を使って、下のように言い換えてもいます。

  1. 何を変える必要があるのか。(中核問題を見極める。)
  2. どのように変えるのか。(判りやすい、実際的なソリューションを作成する。)
  3. 変化をどのようにして起こさせるのか。(適切な人たちに、このようなソリューションを見つけるように仕向ける。)

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FAQ3 制約が固定的でなく、動く場合はどうしたらよいのですか。

解答

浮動的制約(動きまわる制約)は、定期的に、制約がある部門から別の部門に移動する状況と定義されます。浮動的制約は、比較的高い頻度で発生するように見えます。しかし、よく調査すると、現実には、浮動的制約は、まれなことがわかります。多くの浮動的制約は、大きなロットサイズの使用、高い機械稼働率での運転、段取時間を最小化するためのに各生産部門で行なわれるワーク・オーダーの順序付け、移送バッチを処理バッチに等しいと決めてしまうことや、設備への人員配置を変更するなどの管理方針により引き起こされます。

ドラム・バッファー・ロープ方式のスケジューリングが使われている場合、実際には、ほとんどといってよいほど、一つの資源が制約として表面に出てきます。

マネジャーが浮動的制約と見ているものは、実は、ロットとして塊となっている大量の部品が、生産システムを通ろうとする結果で、これにより、ロット全体が作業から作業に動くにつれ、タイミング問題が起ります。これは、蛇が大きな物を食べたときと同じです。塊がゆっくり蛇の体内を移動します。どの時点で見ても、蛇の胴体に沿った別のところが制約のように見えます。しかし、本当は、浮動的制約を引き起こしているのはロットサイズそのものです。浮動的制約は、タイミング問題の結果です。

現場のスケジュール督促係や監督者は、自分達に問題を多く起こしている部門がどの部門であるかを知っています。この部門こそが、恐らく、実際の制約となっている部門でしょう。制約は、多分、多様な構成部品を扱い、多くの構成部品を生産している生産部門の一つでしょう。部品は、制約となっている資源を求めて争います。大きなロットサイズを使うと、この競争をさらに悪化させます。大きなロットサイズは、あたかも蛇が飲み込んだ大きな動物のように、その部門を、一度に通過しようとします。ドラム・バッファー・ロープによるスケジューリング方式は、処理バッチと移送バッチに、二つの(異なる)ロットサイズを使います。

処理バッチは、ある機械を一度に通る同種の部品の量です。もし、その制約で、長く時間の掛かる段取があれば、制約での処理バッチは大きくしようとする力が働きます。段取時間がないか、短い場合は、制約での処理バッチは小さくできます。制約ではない資源での処理バッチは、新しい制約を作ってしまうほどに小さくはなく(注:処理バッチが小さいと段取回数が増え、その結果、段取時間も増えて、実際の処理に使う時間を食ってしまい、制約となってしまう)、また、他の資源をインタラクティブな制約としないために、他の資源を遊ばせられるくらいに大きくなければなりません(注:上流から小さいバッチがたくさん流れてくると、制約でない資源でも、段取時間の割合が増え、今度はそこがインタラクティブな制約となってしまう可能性がある)。

移送バッチは、部門間を移動する材料の大きさです。移送バッチは、処理バッチと同じではいけません。作業の一部の重なり合いにより、(タイミングによる)インタラクティブな制約が除去できます。小さな移送バッチにより、施設内をスムーズに流れる製品フローができ、リードタイムを大きく短縮できます。

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FAQ4 制約は生産部門の中だけにあるのですね。 そうではないのですか。(ソース:「制約管理ハンドブック」、コックス、スペンサー)

解答

TOCがどのように機能するか、その様子を見るには、物理的な資源で考えるのが一番理解し易いので、ブツリテキな制約を使った説明がよく見られます。しかし、現実の状況でみられる制約のほとんどは、物理的な制約ではないのです。システムのスループットを制限するものならなんでも制約なのです。制約は物理的な作業とは限りません。5段階継続的改善プロセスのステップ2で見たように、管理方針も、産出量を制限してしまう現実の制約に容易になり得ます。

いろいろな職能が、異なるタイプの制約を作ります。例えば、輸送方針や設備の不足は、同じように材料の流れを阻害します。コンベアー・システムも制約になり得ます。コンベアー・システムは、生産システムへのフロー、生産システムから出て行くフローを制限し、ワークステーション間のフローを制限します。ワークステーションが停止すると、コンベアー・システムも止まるように設計されているものもあります。コンベアーは、それがフィードするすべての設備の停止時間や段取時間を累積し、システム全体のスループットを厳しく制限します。これらはロジスティックス制約です。制約のもう一つの例は、生産プロセスが必要とする原材料取得の制限で、これは供給制約です。市場自体も制約となり得ます。もし、消費者が、ある企業が保有している生産キャパシティで生産する財貨やサービスのすべてを、現在の価格で購入できないなら、または、購入したくないなら、市場が制約となります。このように、どのような機能や方針でも改善を阻害する要素になりえます。

もし制約が物理的制約なら、5段階継続的改善プロセスを効果的に使い、全体目標の達成を支援するため、スループットが最大になるようにシステムを管理できます。職能や方針が制約であるなら、問題を表面に浮き上がらせるには、思考プロセスの現状問題構造ツリーが必要となります。

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FAQ5 最も普通の制約はなんですか。

解答

これは難しい質問です。TOCの研究者の多くは、物理的な制約ではなく、経営方針のほうが、現実の組織の制約となることが多いと確信しています。

よく見られることですが、マネジャーは、彼らがよい方針や手順と考えるものにより、制限を受けています。これらは、実は、全体目標達成の支援を失敗させるというコストを支払わせたうえで、部分目標のみの達成を支援するものなのです。この説明として、残業は、よく使われる例です。どれくらいの企業が、特に四半期末に、やればできる残業を制限しているか考えてみてください。場合によっては、残業を行うには、部門長の承認が必要です。物理的制約となっているところで残業を制限すると、システム全体のスループットが小さくなり、それに加え、制約でない構成部品の在庫が積み増しされ、不必要な業務費用が掛かります。制約でない部門で、顧客への納期の約束遵守のための残業を行なわなければ、貴重な顧客を失うかもしれません。

「ステップ2は、制約のキャパシティを徹底的に使い切れ!(TOCの理論の精神から言うとこの表現が正しいと思います。何故なら、1分でも制約資源の利用を怠ることは、それだけ、スループットが減るからです。)」といっています。残業は、業務費用への相対的に小さな追加ですが、それにより、相対的に高いスループットを生むことができます。詳しく調べることで、マネジャーは、自分達の方針や手順の多くが、実は、スループットを制限するものであるということを発見しています。なぜなら、現実に使われている多くの方針や手順が、伝統的な業績測定システムの支援を目的に書かれたものだからです。

研究者の一部の人達は、市場自体が、特に不況時には、制約になるといっています。需要と供給の原理により動いている市場は、市場価格と数量間の関係を基に、均衡状態を実現します。物理的な工場や設備のキャパシティは、階段関数として作用します。例えば、ドリルが1台、新たに設置されると、1日24時間、週7日、使えます。労働者数は、多くの企業のキャパシティを実際に決めるものでしょう。労働者を1人追加すると、これ自体は、業務費用への相対的に小さな追加ですが、企業は、販売向けにある大きさのスループットを生産できます。市場がこの追加分を購入するなら、スループット(販売数量X市場価格マイナス変動費)は、直接、その企業の利益増として純利益に反映されます。こうして、システムのスループットを制限するものは、恐らく、市場価格とスループット・キャパシティをバランスさせる能力といえるでしょう。そして、製品価格を製品原価から算定する伝統的な原価計算実務は、効果的に市場での制約を除去する能力を制限してしまっています。

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FAQ6 制約資源をうまく利用する(exploit)ことと、制約資源能力を高める(elevate)ことの相違点はなんですか。(ソース:「制約管理ハンドブック」、コックス、スペンサー)

解答

TOCは、厳密な科学でも処方箋でもありません。より有効な管理により業務を継続的に改善するプロセスとして、TOCを使うというのがアイディアです。「うまく利用する」ことと「高める」ことの違いを理解するよい方法は、システム・キャパシティへの影響を見ることです。制約を「うまく利用する」ことにより、既存資源にキャパシティを追加する短期的なアクションがとられます。例えば、資源へのフロー、または、資源を通過する材料のフローをもっとよくスケジュールするとか、昼休みや休憩時間中も、その資源の稼動が中断しないようにすることです。

これに対して、制約資源能力を「高める」ことは、資源の全体的なキャパシティを高いレベルに引き上げることで、通常、資本設備を追加します。設備は新しいものである必要はありません。制約でない設備を通る代替工程を使い、制約キャパシティの負担を軽くするとか、制約資源で、部品の一部の段取時間を短縮する備品を購入するとかも「高める」ことです。

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FAQ7 「従属(subordination)」をどう実現したらよいですか。(ソース:「制約管理ハンドブック」、コックス、スペンサー)

解答

どれくらい真剣に、制約管理(TOC)を展開したいと思っているのですか。 このステップは、広く受け入れられている習慣(普通に行なわれている実務)に挑戦するので、多分、実行するのが最も難しい部分でしょう。しかし、時間を掛けてTOCの理解を深めれば、TOCが常識だということが理解される筈です。

TOCを導入する多くの会社は、「普通に行なわれている実務」と「常識」をベースとした二つの業績評価システムを並行的に使用する決断をします。原価計算が急速にTOC会計方式に置換されることはないでしょう。財界は伝統的な会計アプローチを使っていますし、政府機関も同様です。しかし、財務会計と、原価計算、管理会計の間には大きな相違があります。政府、および、財界は、企業が財務会計で行なえることについて、非常に制限的です。しかし、原価計算、管理会計は、外部から、さほどの規制を受けていません。コンピュータ利用の会計システムを使えば、二つのシステムを並行的に維持するのは非常に容易なことです。TOC会計を経営上の意思決定に使い、伝統的な財務会計を過去の履歴の記録や政府機関への書類提出に使えばよいと思います。

生産管理工学の業績評価尺度についても同じことがいえます。伝統的な生産性尺度の利用を継続しなければならない理由は、政府からはなにもありません。しかし、実績比較の観点から、継続性を維持する利点はあります。

大きな企業では、TOC会計を一挙に導入することはできません。時間の経過とともに、企業の多くの部署でTOCを使った意思決定方式の導入が進みます。しかし、従来の伝統的な尺度を放棄できる状態になったら、即座に放棄すべきです。矛盾する尺度の存在は混乱を招きます。上級マネジャーは、TOCが企業の利益に直接的なインパクトをもたらす威力を持つこと、したがって、その他の尺度はそれに従属するものであることを常に念頭に置かなくてはなりません。

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FAQ8 なぜ、次々と、ステップ5に進み、改善プロセスをどんどん推進しないのですか。(ソース:「制約管理ハンドブック」、コックス、スペンサー)

解答

ステップ5は移行ステップで、ステップ1にループ・バックします。

TOCの下で稼動している生産システムを通過する部品のフローを確立するには、かなりな仕事量が必要です。さらに、マーケティングと販売部門は、制約をベースに、望ましい製品と市場を識別することで、制約を「うまく利用する」ことに焦点を合わせます。エンジニアリング部門は制約を通過しなくてすむ代替工順を決定します。品質管理部門は、制約で生産される部品が、あとで欠陥品にならないように、万全の処置をとります。計画されていないがために、または、うまく計画されていないがゆえに、フローがさまたげられないように、十分な注意をはらいます。

しかし、ある一定水準を超えて、制約でのキャパシティを「高める」意思決定があると、別の資源が新しい制約となります。キャパシティを「高める」と、高める度合によっては、生産システム内の制約が解消され、市場自体、ないしは、他の職能(エンジニアリング部門、輸送部門など)が新しい制約となって浮上してきます。

こうして、これまでの制約が解消されると、一組の新しい管理ポイントが出現し、少なくとも、スケジューリング・プロセスの焦点を、新しい制約へシフトしなければなりません。したがって、ステップ4[システムの制約を高める]で制約を解消する前に、十分な時間的余裕をもって、スループットのフローを維持するための準備をします。制約を解消し、ステップ1に戻ることが、継続的改善プロセスの核心であることは言うまでもありません。ステップ4を行う前に、状況を十分に把握し、アクション・プランを持つことが重要です。

ステップ5は、物ぐさ、変化への恐れや費用により、継続的改善プロセスが止められてしまうのを戒めています。TOCの下では、「用意、照準を合わせ、打て」をこの順で行ない続けることが重要です。

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FAQ9 最小限の設備投資をしていると、各工程の能力がバランスしてしまい、受注オーダーによっては、生産工程のネックが変化したり、複数の工程がネックになったりしています。このようにラインバランスが取れている場合は、TOCのアプローチをどのようにしたら良いのでしょうか。(質問のソース:JMAM TOCディスカッションコーナー)

解答

質問者のケースの場合、もし、市場が制約であるなら、資源のすべては「ボトルネックでない資源」なので、市場の開拓が、取り組むべき主問題だと思います。

もし、ラインのキャパシティが制約であるなら、下記のアンブル、スリカンスの説明が参考になると思います。恐らく、ラインの中のコアとなる資源のキャパシティを、市場需要を十分に充足できるレベルまで増加させ、それを制約とし、そして、その他の資源は、コアとなる増強された資源のキャパシティが、目いっぱい、機能できる程度まで、十分に大きくする必要があると思います。

なお、アンブル、スリカンスの「シンクロナス・マネジメント」第1巻79ページから86ページにかけて、「バランスのとれている工場」は誤った理想であることを説明しています。つまり、生産ラインには、従属性と変動性が存在するので、キャパシティ的に「バランスのとれている工場」は「誤った理想である」といっています。

バランスのとれている工場-誤った理想

バランスのとれている工場とは、(設備、および、人的資源の)すべてのキャパシティが、コミットされている販売量によって、それらの資源に求められるキャパシティ所要量に等しい工場と定義されます。多くの人が、バランスのとれている工場は効率的な作業が行える最良の製造環境であり、したがって、お金が儲かる最良の製造環境であることは直感的に明白であると主張しています。「ライン・バランシング」のテクニックは、あらゆる現場管理の教育カリキュラムで重要な教育項目と位置付けられ、「バランスのとれたライン」は、殆どのエンジニアや現場の作業を監督するマネージャーは、日々、その実現に努力しています。兵士達の行進の比喩を使い、以下では、「バランスのとれている工場」が誤った理想であることを説明します。(以下、割愛)

詳しくは、「シンクロナス・マネジメント」第4章、アンブル、スリカンス著、小林英三訳、ラッセル社発行をご参照下さい。

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FAQ10 スループットとは売価から資材費を引いたものと表現され、TOCではそれを増やす事を目的としていますよね。基本的な事なのでしょうが、TOCでの売価とはどの様に設定すべきとなっているのでしょうか。 (出所:JMAM TOCディスカッション・コーナー)

解答

「TOC固有の売価の設定法」というものはないと思います。

一般に、(経済学が教えるように)、売価(価格)は市場が決め、個々の企業にとっては、価格は外から与えられるものと考えます。

こうして、売価を外から与えられたとして、企業は、それを条件として、自企業内の制約を念頭に、どの製品を、それぞれどれだけ販売するかという意思決定を行います。この意思決定に対応するのが、スループットを最大にする「製品ミックス」です。

質問の趣旨から考えると、答は「TOCでは価格を設定しない」、それに代わって、「製品ごとに、市場が決める価格で、売るか売らないか、売るとすれば、どこで、どれだけ売るかを決定する」ということになると思います。明らかに、ここには、売らないという意思決定も含まれています。

市場のセグメントを考えると、同一製品でも価格が異なることは、十分、ありえると思います(例えば、米国市場と日本市場での価格)。これは、製品の供給者である企業からみると、(製品が一つと仮定して)最も高く買ってくれる市場セグメントから供給(販売)して行き、それでもまだキャパシティに余裕のある場合は、2番目に高く買ってくれる市場セグメントへ、次いで、3番目に高く買ってくれる市場セグメントへと、制約資源のキャパシティを使いきるまで販売して行きますが、こうすることは、「スループットが最大」になることに繋がります。この場合、制約でのスループット・レートは、定義的に、順次、漸減して行きます。

製品が複数で、個々の製品に複数の市場セグメントがある場合は、製品/市場セグメントの組合せごとに、制約資源でのスループット・レートを計算し、レートの高い製品/市場セグメントから、順次、需要を充足して行き、制約資源のキャパシティが使い切られるようにします。

上の議論については、Goldratt の "The Haystack Syndrome" の93-99ページ、また、CorBett の "Throughput Accounting" の第4章を参照されるとよいと思います。

なお、"Throughput Accounting" の、この考え方は、線形計画法の「最適製品ミックス問題」の考え方と完全に一致し、「LP屋(そして、多くの会計屋)」の間で、昔から「常識」として知られていたものです。

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FAQ11 「制約管理」という言い方があり、また、「制約理論」という言い方もあります。これは、同じものなのでしょうか。

解答

日本語では「制約理論」、「制約条件の理論」、「TOC」などと呼ばれていますが、英語では、"Theory of Constraints" です。一方、「制約管理」に対応する英語は、"Constraints Management" (略してTOCと呼ばれる)です。

APICSが出版している生産管理用語の定義辞書 (APICS Dictionary) によると、「制約管理(TOC)は、制約理論(TOC)の原理に従って、資源と組織を管理すること」と定義されています。

したがって、制約管理は「制約理論(Theory of Constraints)」の「理論」という用語から想像されてしまう実際的適用との語感的な距離を埋めるために作られた言葉であると考えられます。

一方で、"Synchronous Manufacturing" とか "Synchronous Management" という言葉を使っている研究者(例、M. M. Umble、M. L. Srikanth)もおります。これはおそらく、"Theory of Constraints" から問題解決/思考プロセスを除いた部分に対応する言葉であり、これにはフォード・システムからJIT、TOCまでが含まれているようです。

注: APICS (American Production & Inventory Control Society)

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FAQ12 なぜ、「制約」理論なのか。

解答

生産工学的な立場は、生産の現場にあっては、各現場での作業の改善をさしあたっての目標とします。その結果、問題の解は「部分最適」を目指してしまう傾向を持ちます。この前提は、制約理論の立場が「全体」を一つのシステムと見て、全体最適を志向するのと大きく異なっています。すなわち、制約理論は、文字どおり生産システムを「システムとして見る」立場に立ち、原材料の手当から、市場での販売までのサプライチェーン、すなわち、原材料から市場への財貨やサービスの供給には、「制約」が必ず存在し、それがその「システムのスループット」を制限するという考え方をします。このことから、「制約」を管理する生産理論、すなわち制約管理ということになります。

このあたりは、TOC独特の言葉遣いなので、ちょっとなじめない感じがするかもしれませんが、たとえば生産ラインなどで、「制約工程」=「制約の存在する工程」=「スループットを最大にするための着目点」と考えれば、すっきりとご理解いただけるかもしれません。

ここで、
「スループット」= 売上 - 真の変動費
であり、真の変動費は、原材料費、輸送費、販売コミッションなどのように販売数量にリンクして変動する、「経常経費を配賦しない」(真の)変動費のことです。制約理論の立場から、従来の原価計算に対する批判が出てくる根拠は、ここにあります。

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FAQ13 制約理論的な立場では、従来の「製品原価」に対する考え方が大きく異なるということですが。

解答

制約理論で導入されている「スループット会計」は、スループット、在庫、業務費用という次の三つの概念の上に組立てられています。

◆ スループット (T) --- 制約理論では、システム(会社)が、販売によりキャッシュを生み出すレートを意味する。(APICS Dictionary, P. 85)

◆ 在庫 (I) --- 制約理論では、在庫は、(加工などをして)再度売却するために購入された品目と定義され、最終製品、仕掛品、原材料を意味する。在庫は、常に購入価格で評価され、付加価値原価を含まない。この点が、伝統的な原価計算では、生産プロセスを通して仕掛品が進むにつれ、直接労務費と間接費配賦を追加していくのとは異なる。(APICS Dictionary, P. 40)

◆ 業務費用 (OE) --- 制約理論では、企業が、特定の期間において、在庫を販売に変換するために費やした金額を意味する(注:この金額は(短期的には)固定的であると考える)。 (APICS Dictionary, P. 55)

「スループット」とは、換言すると、[売上-真の変動費]ですから、原材料費に加え、販売コミッション、出来高払いの臨時工の賃金、運賃など、販売数量に従い変化する費用はスループットの計算に入りますが、対象領域が狭い意味の生産システムの場合は、[売上-原材料費]と定義できる場合もあります。

「在庫」とは、最終製品、仕掛品、原材料を意味します。伝統的な原価計算において、生産プロセスを通して仕掛品が進むにつれ、直接労務費と間接費配賦分が在庫の評価に追加されてゆくのとは異なり、上のAPICS Dictionary の定義にあるように、在庫は、常に、購入価格で評価され、付加価値原価を含みません。

「業務費用」とは、原材料費を除いた、その他のすべての費用を意味します。役員報酬、ペイロールに乗っている正規社員の直接労務費を含む給与、福利厚生費、賃料、水道光熱費、消耗品費(糊、仕上用化成品など)、設備費、間接部門のすべての費用、利息、その他の費用すべてが業務費用に含まれます。これらの費用は、企業が、ある特定の期間において、在庫を販売に変換するために費やした金額であると考えます。昔は、直接労務費は出来高払いで、製品数量に密接に関係していましたが、現在では、(少なくとも短期では)販売数量の増減に関わりなく、固定的な経費で、この理由から直接労務費は業務費用の中に含まれます。こうして、制約理論では、「利益=スループット-業務費用」となります。

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FAQ14 TOCの来歴について、教えてください。トヨタのカンバン方式みたいな簡単な説明がいいです。

解答

TOCは、イスラエル人の物理学者、エリヤフ・M・ゴールドラット博士が1970年代に開発した生産現場でのスケジューリングを行うソフトウェア「OPT: Optimized Production Technology」までさかのぼることができます。ゴールドラットは、1974年末に、このソフトウェアを開発し、設備や労力の追加なしに、生産を40-50%増加させることに成功しました。彼は、OPTの優れた点を認識していたCDC社の勧めで、Creative Output Inc.社を設立しました。アメリカでの最初のプロジェクトはGEの防衛システム事業部での仕事でしたが、そこで彼は、スループット*を30%増加させ、かつ、在庫を半減させることに成功しました。

1984年、ゴールドラットは産業小説 "The Goal" を出版し、OPTの考え方を同書の中で明らかにしました。この本は、世界で200万部も売れたといわれるベストセラーになりました。

この本を買って、そこに述べられている考え方を実行した多くの企業で同様なことが起こりました。これが、TOCの誕生神話であるということができます。ゴールドラットにとってショックだったのは、この本を、たったの15ドルで買った企業が小説の中の考え方を実行したところ、彼の高価なソフトウェアを購入して導入し、社員を教育した企業よりも、よい成果を挙げてしまったことです。この本を買って、そこに述べられている考え方を実行した多くの企業で同様なことが起こりました。

このエピソードは、制約理論は、あまり難しく考えず、その基本的な原理を関係者全員が正しく理解し、トップの支持の下で、要点を押えて展開して、生産システムの中に存在する制約資源を明確に意識し、それを徹底的に使うことを試行錯誤的に行うことから開始でき、その効果も短期間で現れてくることを意味していることを示しています。

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FAQ15 "The Goal"という小説の話が、TOC関係の本や、関係者の話によく出てきます。粗筋を教えてください。

解答

"The Goal" は、産業小説とでも言うべきジャンルの小説で、1984年、ゴールドラットとジェフ・コックスの共著で出版されたものです。OPTの考え方を同書の中で明らかにし、その普及のためのツールと考えてよいでしょう。ただし、後述しますが、仕事優先の主人公に愛想をつかせて奥さんが実家に帰ってしまうなど、人ごとではないエピソードも満載で、小説としてもなかなか読ませると思います。

この本は、中国語を含む十数ヵ国語に翻訳され、世界で200万部も売れたといわれるベストセラーになりました。なぜか、日本語版は、まだ、ありません。

メインのストーリーは、アレックス・ロゴという主人公が、自分の管下にある工場の成績が改善されない限り、3ヵ月後には閉鎖すると予告され、奮闘するというものです。

アレックスは、ジョナというイスラエル人の物理学者の指導の下に、5段階継続的改善プロセス、スループット、在庫、業務費用などのTOC概念を学び、現場に適用することで、たった3ヵ月で業績の改善に成功します。

例えば、TOCの中心概念として有名な、「ドラム・バッファ・ロープ」は、アレックスの息子が、ボーイスカウトのキャンプに参加するとき、全体の歩調は、最も早くても、一番足の遅いハービーという子どもの速さに合ってしまい、そして、もし、彼の前の子どもが立ち止まり、一番足の遅いハービーという子どもも立ち止まらなくてはならなくなると、全体は、一番足の遅いハービーという子どもの速さですら実現できなくなるといったエピソードによって気づくことになっています。

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FAQ16 ジョナ(Jonah)とは何で、どんな人たちですか。(ソース:APICS FAQ)

解答

ジョナとは、ゴールドラットの小説『ザ・ゴール』の主人公アレックス・ロゴに助言を与える物理学者の名前です。ジョナは、アレックスが自分オーダー工場を悩ませている問題を確認し、解決しようとする際に、いろいろアドバイスします。

そこから発展し、TOCの世界では、ジョナは、一般的な意味を持つようになり、今では、ゴールドラット・インスツテュートの行う2週間のコースに出席し、ツールとしての5段階継続的改善プロセスを、どのように適用したらよいかを学んだ人たちを意味するようになりました。ジョナは、このツールを、その本来の意味に適ったやり方で適用出きる人たちです。

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FAQ17 『ザ・ゴール』ってなんですか。(ソース:APICS FAQ)。

解答

まず、第一に、それは、ゴールドラットが制約理論について書いた最初の本のタイトルです。この本の中で、主人公アレックス・ロゴは、彼の会社の目標は「儲けること」と定義します。経理部の専門家と共に、彼は、この目標の測定尺度として、利益、ROI、キャッシュフローの三つを取り上げます。

その後、営利企業の目標は「現在、および、未来にわたって、もっと多くのお金を儲けること」と定義されました。また、キャッシュフローは目標の評価尺度ではなく、必要条件であると認識されました。キャッシュフローは、血圧のように、あまり高くなく、また、あまり低くなく、一定の幅の中にあって欲しいと願う種類のもので、できるなら、増加させたい企業目標の評価尺度の一つです。(ブラックストーン)。

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FAQ18 TOCでは、「在庫: Inventory」と「業務費用 (Operating Expense)」をどのように定義していますか。(ソース:APICS FAQ)

解答

在庫は、販売することを目標に購入された品目に投じられたすべての資金であると定義されています。換言すれば、在庫とは、営利組織が所有し、製品やサービスを市場に提供するために使うすべての品目の価値です。

また、業務費用とは、在庫をスループットに変換するために使うすべての資金であると定義されます。

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FAQ19 なぜ、これらの定義が重要なのですか。(ソース:APICS FAQ)

解答

スループット、在庫、業務費用は、営利企業の業績を評価するための三つの業務評価尺度です。これらの尺度から、組織の中の、(部、課、チームなどの)より小さい部分の業績を評価する尺度を定義できます。これらの尺度により、各組織の部分の目標が、全体目標と整合したものとなります。

企業の目標は「お金を儲ける」ことです。ゴールドラットは、以下のように言っています。
「お金を儲ける」能力を大きくするには三つの方法がある。

  1. スループットを増加する
  2. 在庫を減らす
  3. 業務費用を小さくする

ゴールドラットは、お金を儲けるための方法として、在庫、業務費用を減らすことを考えると、それらはゼロ以下にはできないので、そこが限度となってしまうと言い、それに対して、スループットを増加することで「お金を儲ける」という方法は、儲けに限度がありません。

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FAQ20 TOCでの利益、ROIとはなんですか。

解答

TOCでの利益、ROIは、次のように定義されます。

利益=スループット-業務費用 ROI=(スループット-業務費用)/在庫

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FAQ21 Haystack Compatible Systemとはなんですか。

解答

この言葉は、例えば、R. E. Stein の "Re-engineering the Manufacturing System"の「はしがき」の中に見られます。彼は "The TOC based system" という言葉も使っています。

ゴールドラットは、彼の著作 "The Haystack Syndrome"の中で、ドラム・バッファ・ロープシステムのアルゴリズムを初めて公開しました。Haystack Compatible Systemとは、この本の中で説明されたアルゴリズムに忠実なスケジューリング・ソフトを指すようです。

"Manufacturer's Guide to Implementing the Theory of Constraints" を書いたMark Woeppel 氏によると、現時点(2001年3月)で、(日本)市場で入手できる、いわゆる、DBRスケジューリング・ソフトは、MAPICS Inc.社の「Thru-Put」のみのようです。

------------------------------------------------------
There is only one Haystack scheduler on the market. It's Thru-Put by
MAPICS (www.thru-put.com).(Source: Mark Woeppel のメール)
------------------------------------------------------

また、中立的な立場にあり、1985年より、OPTの考え方に関与し、OPT自体には関係しなかったと言っていGoldratt-TOC.com のJohn Tripp 氏は、ゴールドラットの考え方に準拠したシステムとして、OPT、DISASTER、Thru-Putの三つを挙げています。

なお、APS に使われているスケジューリング・アルゴリズムが "HaystackCompatible" であるかどうかの見分けは、「タイムバッファ」が明示的に入っているかどうかで見分けるのがよいと言われています。

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FAQ22 「現状問題構造ツリー(CRT)」と「石川フィッボーン図」は、両方とも、原因と結果を結びつける方法で、問題を解決しようとする手法と理解していますが、相互の良い点、悪い点は何なのでしょうか。

解答

これらの二つは、同じものではありません。

これらの二つは、確かに、両方とも、問題解決ツールです。両者の間の大きな違いは、石川フィッシュボーン図は、結果(事象)と、それを発生させた原因と考えられるものの関係を利用していますが、その因果関係を確認していません。それに対して、現状問題構造ツリー(CRT)は 、結果-原因-結果の関係を追求します。つまり、前者は「二層レベルの科学 (The secondlevel of science)」であるのにたいして、後者は「三層 レベルの科学 (the third level of science)」です。この二つのロジックは異なります。つまり、石川フィッシュボーン図が、観察 (observation)レベル、分類 (classification)レベルからなっているのにたいして、現状問題構造ツリー(CRT) は、観察 (observation) レベル、分類 (classification) レベルに加え、結果-原因-結果(EFFECT-CAUSE-EFFECT ) レベルまでを含んでいます。

つまり、石川フィッシュボーン図は、事象を惹き起すと考えられる原因がなんであるかを推定するツール、それに比較して、現状問題構造ツリー (CRT)は、中核問題に関連する因果関係をできるだけ明確にし、中核問題に就いての理解をさらに深いものだと思います。

この違いをはっきりと理解するには、具体例が必要でしょう。

ジム・ボウルズ
(注) 結果-原因-結果 (EFFECT-CAUSE-EFFECT ) レベルで行うこと: まず、観察し、事象を分類し、原因についての仮説を置き、その仮説に基づき、他の事象を予測すること。 この「科学の三つの層」に就いての説明は、ゴールドラットの "Theory of Constraints" by Eli Goldratt (1990) の23ページに記されているようです (出所:CMSIG)。(小林記)

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FAQ23 制約が市場にある場合の対応のお考えがあれば教えて下さい。

解答

(以下は、主として、アンブル、スリカンスの「シンクロナス・マネジメント」、および、コックス、スペンサーの「制約管理ハンドブック」を参考にして書いたものです。)

ご承知の通り、TOCでの制約は、アンブル、スリカンスの「シンクロナス・マネジメント」によると、以下のようになります。

  • 物理的な制約
    • キャパシティ(生産資源)制約
    • 原材料制約
  • 市場の制約
  • 方針の制約
    • ものの見方による制約
    • 業績評価尺度による制約
    • 方式(手順や利用する各種の方式やテクニック)による制約

これらの三つの種類の制約は以下のように定義されています。

物理的制約
性格的に物理的で、タンジブルな制約で、制約であると認識するのが容易。この種類の制約には、機械のキャパシティとケイパビリティ、要員の利用可能人員と彼らのケイパビリティ、原材料の利用可能数量と品質、利用可能なスペースの有無。
市場の制約
市場の制約は、ある会社の製品やサービスへの需要が、その会社の供給キャパシティに等しいか小さい場合、または、製品やサービスへの需要が、なんらかの他の理由で、その会社のボトムライン業績を制限する場合、存在するといいます。
方針の制約
その性格からいって、物理的でない類の制約。この種類の制約には、測定 (measure) や方法 (method) に関連するすべてのシステム体系を含み、組織が行なう、戦略的、(日々の)戦術的な意思決定を支配する考え方 (mindset) さえすらも含まれます。

アンブル、スリカンスは、市場の制約について、「シンクロナス・マネジメント」の中で、以下のように述べています。

市場の制約
どの工場でも、市場需要、もっとはっきり表現すれば、実際の販売量は、非常に重要です。市場需要は、企業が活動できる境界を決めてしまいます。

市場の制約は、ある会社の製品やサービスにたいする需要が、その会社の持つキャパシティに等しいか小さい場合、または、なんらか理由で、その会社のボトムラインを制限している場合に存在します。この定義の最初の半分は自明ですが、定義の後ろの半分「または、なんらか理由で、その会社のボトムラインを制限している場合に存在する」には説明が必要で、以下で、例を使って説明します。 ここに、いくつかの製品を生産している会社があったとします。ここで、製品の内のある特定の製品が、使われる資源で比較し、単位あたりで最大のスループットを生むので、その会社の重点製品であったと仮定します。この会社には、キャパシティ制約があり、この制約は、生産し、そして、販売できる全製品の全数量を制限しているので、これにより、スループットも制限されています。しかし、ここで、もし、重点製品の需要に制限があると、この制限も、また、スループットを制限し、こうして、市場の制約も存在しています。

続いて、

市場の制約は、会社により提供できる製品やサービスの一つ、または、複数にたいする需要が十分に存在しない場合に、発生します。しかし、これは、市場の制約が存在するにいたる真の理由とは言い切れません。市場が制約となっている状況をもたらす通常の理由の一つは、その会社が市場に提供する、製品を含む広い意味でのサービスが、所属する産業で求められている競争上の諸要件に比較し、不十分なためです。競争に関連する要素には、リードタイム、価格政策、納期遵守についての信頼性、品質標準などがあります。もし、ある企業が、市場の求める競争要件を満たすことができないならば、これにより、あたかも市場が制約であるように思われる状況を生み出してしまいます。市場が制約であると考えられる状況を生むもう一つのよく見られる理由は、企業が、組織として、例えば、新しい市場を開拓するなどの、手持ちのシステムのケイパビリティを利用し尽くす戦略を適切に立てていないことです。

以上のアンブル、スリカンスの言い方に、少々、解説を加えると、上の文章は、二つのことを述べています。

その一は、見かけ上、「市場が制約である」と現象的に見えても、それは、実は、その会社(工場)が提供する製品、および、関係サービス(リードタイム、価格政策、納期遵守についての信頼性、品質標準など)が顧客要求を満たしていないことが理由で売れず、そうなっているのだと言っているのだと思います(マーケットシェアが100%の会社は、通常、ない)。そして、リードタイム、価格政策、納期遵守についての信頼性、品質標準などに関連して顧客を満足させられないのは、競争相手よりも、納入リードタイムが長く、価格が高く、納期遵守度が劣り、品質も良くないからであり、顧客は、納入リードタイムが短い、価格が安い、納期を常時守ってくれ、良い品質の製品を供給してくれるサプライヤーから製品を購入する、したがって、「我が工場」の製品は売れず、「市場が制約」であるように見えると言っているのだと思います。

TOCでは、競争相手よりも、「納入リードタイムが長く、価格が高く、納期遵守度が劣り、品質も良くない」理由は、工場内での「仕事のやり方」が間違っているからであり、そして、「仕事のやり方」が間違ってしまっている理由の多くは、方針の制約(ものの見方による制約、間違った業績評価尺度による制約、間違った方式や手順による制約)によると言われています。

また、その二は、「企業が、組織として、例えば、新しい市場を開拓するなどの、手持ちのシステムのケイパビリティを利用し尽くす戦略を適切に立てていないことです」の部分ですが、これは、例えば、現在、販売している製品市場が成熟市場になり、これ以上は成長が見込めないどころか、むしろ、衰退すると予想されているような状況のことを言っているのだと思います。このような状況では、例えば、新製品の開発、新しい販売方法による製品販売、(外国市場などの)これまで進出していない市場への進出などにより、新しい市場を開拓する必要があるといっているのだと思います。

これに関連して、コックス、スペンサーは以下のように述べています。 (5段階継続的改善プロセスの)ステップ 4 で制約が解消されると、制約個所が、それまでの場所から他の場所(マーケティング、販売、購買など)に移動することがよくあります。生産業務の制約がすべて解消あれ、生産業務から制約が他の機能に移動すると、多くの場合、マネジメントの方針が新しい制約となります。例えば、製品価格やマージンから算定される販売コミッション、製品原価プラスX%のマージン以下では販売しない、政府機関には販売しない、世界市場には販売しないなどです。また、企業方針として、無印商品、他社ブランド、競争相手、部品市場には販売しないなども、これに含まれます。将来のスループットの障害となるものは、文書になっているもの、なっていないものも含め、文字通り、無数にあります。この点に関しては、個々の企業ごとにユニークです。ある状況の中で、真の中核問題を識別するには、思考プロセスのCRT分析が有効なツールとなります。著者の知る範囲では、方針上の制約を浮かび上がらせる唯一のツールです。

TOCでよく使われる言葉に "Unrefusable offer" という言葉があります。その概略の意味は、「顧客は何を買っているのか? それは、製品でもサービスでもない。彼らの問題へのソリューションを買っているのだ。したがって、自社のボトムラインを改善するには、潜在的な顧客が、彼らのボトムラインを改善できるような製品やサービスを提供することによってのみ可能である。そのためには、顧客が飛びついてくる "Unrefusable offer" を考え、顧客に提供しなければならない。」という流れのなかでの"Unrefusable offer" です。

市場制約について、コックス、スペンサーは、「制約管理ハンドブック」の中で、以下のようにも述べています。

「市場自体も制約となり得ます。もし、消費者が、ある企業が保有している生産キャパシティで生産する財貨やサービスのすべてを、現在の価格で購入できないなら、または、購入したくないなら、市場が制約となります。」

続いて、
「研究者の一部の人たちは、市場自体が、特に不況時には、制約になるといっています。需要と供給の原理を通じて動いている市場は、市場価格と数量間の関係を基に、均衡状態を実現します。物理的な工場や設備のキャパシティは、階段関数として作用します。例えば、ドリルが1台、新たに設置されると、1日24時間、週7日、使えます。労働者数は、多くの企業のキャパシティを実際に決定する資産でしょう。労働者を1人追加すると、これ自体は、業務費用への相対的に小さな追加ですが、企業は、販売向けにある大きさのスループットを追加的に生産できます。市場がこの追加分を購入するなら、スループット(販売数量X市場価格マイナス変動費)は、直接、その企業の利益増として純利益に反映されます。システムを制限する活動は、恐らく、市場価格とスループット・キャパシティをバランスさせる能力でしょう。製品価格を製品原価から算定する伝統的な原価計算実務は、効果的に市場での制約を除去する能力を制限してしまっています。」

このように、コックス、スペンサーは、市場が制約であるように見える一つの理由として、企業の「市場価格とスループット・キャパシティをバランスさせる能力」を挙げ、その能力が欠ける理由として、「製品価格を製品原価から算定する伝統的な原価計算実務」を挙げています。

「製品価格を製品原価から算定する伝統的な原価計算実務」に対抗するものとして、TOCではスループット会計の考え方を勧めています。これは、価格や製品ミックスの決定に、重要な影響を与えます。

アンブル、スリカンスは、「シンクロナス・マネジメント」の中で、以下のように述べています。

シンクロナス・マネジメント原理 2b
制約市場での追加的なオーダーの限界価値は、そのオーダーのスループット価値に等しい。

原理 2b が真実であることは自明です。もし、市場が制約であるとすると、追加的なオーダーを受け、処理するのに必要なキャパシティと原材料は利用可能です。こうして、新しいオーダーを受注し、出荷することで、工場全体として、追加的なスループットが生まれます。逆に、オーダーを一つ失うと、それは、取り返しできず、対応するスループット全体が失われます。

コックス、スペンサーも、次のように述べています。

どんな業績測定システムであっても、市場の持つ潜在性と機会を、それらの潜在性と機会を満たす財とサービスを提供するのに関連するコスト増分に結び付けられるものでなければなりません。市場の提供する機会がボトムラインに与えるインパクトを判断するには、資源のケイパビリティと顧客ニーズの両方を間断なく評価ことが不可欠です。これが、絶えることなく新しい市場機会を増大させ、自社に忠実な顧客を満足させることにより、継続的改善のプロセスを維持するする唯一の道です。読者の組織は、多様性、価格、品質、リードタイム、納期遵守、新製品の投入、敏感な反応などに関して、顧客の製品やサービスへのニーズに絶えず応えることで、忠実な顧客を満足させます。企業は、顧客が製品やサービスを購入し、その寿命が継続している間、顧客の期待に合致し、期待を越える製品やサービスを絶えることなく提供しなければなりません。このプロセスは、将来のビジネスを保証します。顧客問題の解決にも、思考プロセスは、役立ちます。

以上、あまり、体系的でないことを書いてしまいましたが、質問「制約が市場にある場合の対応のお考えがあれば 教えて頂きたいのですが?」にいささかでもお答えできていることを願っています。

MSI
小林 英三

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FAQ24 TOCについて、日本での実施事例・経験では、どのような工程・プロセスが「ボトルネック」としてピックアップされているのでしょうか・・・。

解答

ウオッペル著小林訳の「制約理論のインプリメンテーション」のページ14-17をご参照下さい。 そこに記述されていることから(ウオッペルの経験)、実は、物理的な制約(資源制約、原材料制約)は、ごくまれにしか見られず、その大部分が「方針制約」であるといわれています。

  • 方針制約: 90%
  • 資源制約: 8%
  • 原材料制約: 2%

現象的には、資源制約であるように見えますが、実は、従来の伝統的な業績測定尺度、ロットサイズ決めなどのような「ものごとの考え方」が、実は、スループットの増大を阻んでいるというのが事実のようです。「ザ・ゴール」のなかでもそうでした。コックス、スペンサーも同じことを言っています。

ということで、恐らく、日本でも、同様であると思います。小生が関係したある工場でも、DBRを導入したら、数週間で、産出量が19%も大きくなりました。このケースの場合も、工程キャパシティが足りないと考えられていたのですが、実は、方針が制約でした。

以上、ご参考になれば幸いです。

小林 英三

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FAQ25 「TMさんからの質問(質問の出所: JMAM TOCディスカッションコーナー)」

海外工場に勤務している立場から、いくつか質問させていただきます。

質問

1. 弊社は、日本の本社からの受注に基づいて生産をしています。1年を通じて、 生産量の変動が激しく、少ないときは直接人員、設備ともに過剰となり、逆に多いときは社内では不足するので外注先を使用しています。

このような場合、制約条件が、あるときは市場となり、あるときは社内工程となり、という風に絶えず変化するように思われますが、どのようにTOCのアプローチをしていけばよろしいでしょうか?

解答

以下の議論は、この海外工場が、ご本社からの指示による受注生産で操業していると仮定します。

  1. ご承知のとおり、TOCの根っこは「現在、および、将来にわたって、お金を儲ける」ということです。しかし、工場として、会社全体の立場で考えて、自分の工場の役割を認識した上で、「受注したものは、必ず生産する」という工場の使命と、全社的観点から見た「会社全体としての、現在、および、将来にわたって、お金を儲ける」ということの関係を確認することが出発点だと思います。つまり、本社の指示に背いて、製品ミックスを変更してもよいのですか、ということです。
  2. それはさておき、一般に、このような場合、(TOCに限らず)、通常、需要をキャパシティに合わせるような努力を行い、生産の平準化を実現するように求めると思います。要は、こうすることで、手持ちのキャパシティから、できるだけたくさんのスループットを生み出し、外注費を節約しようとすることです。この努力は、大きく報われるはずです。
  3. 仮に、この大きな振幅が、まったくのランダムではなく、例えば、季節変動のような規則性があれば、そのような規則性を上手く利用することです。
  4. しかし、その理由が、働いていらっしゃる海外工場が、御社の他の工場を合わせた全体的な役割分担の中で、需給のバランスをとる機能を担っているとするなら、生産している製品をABC分析や、標準品や、特注品などのような、まったくの受注生産品目に分類し、make-to-stock、make-to-orderなどに分類して、できるだけ、生産レベルを(部分的にでも)安定させるようにするのがよいと思います。
  5. もう一つのポイントは、(仮に、そうすることが許されているとして)、製品ミックスを念頭に、キャパシティが足りないときは、儲からない製品を拒否し、儲かる製品の生産に集中することです。(TOC的な基準を使って)利益の出る製品と出ない製品に、例えば、3分類くらいに分類し、キャパシティが足りないときは、儲かる製品の生産に集中し、需要をキャパシティに合わせるべきです。つまり、儲からない製品は、注文を拒否することです(勿論、外注しても、儲かるなら生産します)。しかし、キャパシティに余力があるときはこれらの製品の注文も受けるという、状況に応じた戦略を持つことです(ここで、当然、キャパシティ利用について、4)との競合が起こりえます)。(特に、宣伝をするつもりはないですが、例えば、MAXAGER社の製品「MAXAGER」を研究されるとよいと思います。)

質問

2. スループットの計算式によれば、変動費には外注加工費を含めるとの事ですが、この考え方に従うならば、弊社のように、同一製品をそのときの仕事量により社内で作ったり外注で作ったりしているような場合には、同じ製品でも場合によってスループットが異なってしまい、最適なプロダクトミックスの判定が出来なくなるように思われます。このような場合は、外注加工費は直接労務費と同じく営業費用に含めるのが妥当ではないかと思うのですが、如何でしょうか?

解答

TOCでは、ご承知の通り、意思決定を可変費用のみを念頭に行います。

  1. 「同一製品をそのときの仕事量により社内で作ったり外注で作ったりしているような場合には、同じ製品でも場合によってスループットが異なってしまう」は、正しいご認識です。
  2. しかし、「外注加工費は直接労務費と同じく営業費用に含めるのが妥当ではないかと思うのですが、如何でしょうか?」については、そうは思いません。例えば、キャパシティに余裕のあるときに、従来のやり方では外注に出してしまうものを、内部資源で作れます。
  3. 「現在、および、将来にわたって、お金を儲ける」ということから考えて、日本の本社からの受注のままに、「同一製品をそのときの仕事量により社内で作ったり外注で作ったりしていること」の理由を確認しないままに、そのままにしておいてよいのでしょうか。例えば、腐らない、棚もちの長い製品でしたら、キャパシティに余力があるときに、例えば、「make-to-stock方式で標準品を生産する」ということは考えられないのでしょうか。
  4. 多分、「全社的な最適製品ミックス」は、御社の中に存在しているすべての工場を統合して考え、各工場の役割分担、保有キャパシティ、スキル、特徴などを念頭に、考えないといけないと思います。

質問

3. 弊社は、日本の本社主導で各海外工場のオペレーションが行われており、このようなケースでは、会社全体にTOCを適用してスループットの最大化を図る事が極めて有効ではないかと思っています。しかし、如何せん本社の頭の硬い連中を動かすのは至難の技です。そこで、私の勤務する工場だけでもTOCを始めてみたいと思っております。このような考え方は、部分最適の積上げを否定するTOCの思想から見ると邪道なのでしょうか?あくまでも全社レベルで適用しなければ無意味なのですか?

解答

  1. 「会社全体にTOCを適用してスループットの最大化を図る事が極めて有効ではないかと思っています」は正しいご認識と思います。
  2. 「私の勤務する工場だけでもTOCを始めてみたいと思っております」についてですが、結構だと思います。しかし、この場合、工場としてのミッションをないがしろにすることはできません。気になるのは、「本社の頭の硬い連中」が、実は、なんらかの全体最適の考え方の中から、(例えば)ランダムと思われる生産指示を出しているとすると、現地で見た場合、なんでこんな馬鹿なことを、と考えることが「全体最適から見て、理に適っている場合もあり得ます。この場合、工場運営の原理は、「スループットの最大化」ではなく、「(本社から与えられた課題を)変動費を最小にするという原理」で遂行するのが、工場としてのミッションでしょう。つまり、この場合、「製品ミックスを最適化して、工場のスループットを最大にする」という自由は与えられておらず、もし、それを行ってしまうと、会社としての「全体最適」を崩すことになってしまいます。
  3. したがって、例えば、DBRを適用して、同一の生産を行うのに必要な仕掛品在庫を減らしたり、リードタイムを短縮するなどして、変動費を小さくし、顧客サービスを向上させることは良いことだと思います。

以上、事情の判らないままに、書きました。的外れでしたら、笑い飛ばして下さい。

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FAQ26 「aibaさんからの質問(質問の出所: JMAM TOCディスカッションコーナー)」スループット、限界利益、付加価値はどう違いますか

解答

「限界利益」: 限界利益とは、売上収益から変動費を差し引いた残額で、固定費の回収と利益に貢献すると言う意味で、貢献利益 (contribution margin) ともいわれます。そして、会計学的な意味での貢献利益(marginal profit、marginal income、contribution margin) は、貢献利益 = 売上高-直接材料費-直接労務費-販売直接経費-変動製造間接費 と定義されているようです。

また、スループット会計での「スループット」は、売上高-真の変動費合計と定義されています。(下表を参照 Source: The theory of Constraints and Its Implication for Management Accounting by Eric Noreen 他)。

貢献利益とスループットを比較すると、その違いは、下表からわかるように、直接労務費、変動間接費を変動費と考えるかどうかです。

直接原価計算とスループット会計の比較
伝統的な直接原価計算 直接労務費を固定費とした直接原価計算 スループット会計 簡易スループット会計
売上 - 直接材料費 - 直接労務費 - 変動間接費※ = 貢献利益 売上 - 直接材料費 - 変動間接費※ = 貢献利益 売上 - 真の変動費合計 = スループット 売上 - 原材料費 = スループット
売上 - 直接材料費 - 直接労務費 - 変動間接費※ = 貢献利益 売上 - 直接材料費 - 変動間接費※ = 貢献利益 売上 - 真の変動費合計 = スループット 売上 - 原材料費 = スループット
貢献利益 - 固定費 = 利益 貢献利益 - 固定費 = 利益 スループット - 業務費用 = 利益 スループット - 業務費用 = 利益
*製造、非製造両方の変動間接費を含む

ここで、伝統的な直接原価計算での「変動製造間接費」とは、補助材料費(にす、ペイント、くぎなど)、工場消耗品費(重油、潤滑油、紙やすりなど)、消耗工具器具備品費(ドリル、計器、ハンマーなど)を指します。また、スループット会計での「業務費用」とは、役員報酬、給与等の社員人件費、賃料、水道光熱費、消耗品費(糊、仕上用化成品など)、設備費、利息、その他の費用すべてを含み、この中には直接労務費も含まれています(拙著:「制約理論(TOC)についてのノート」の第5章参照)。

一方、「付加価値」ですが、製造業で生産される製品は、原材料に労働が加えられ、その存在形態を変更して製品となり、消費者に届けられます。製品とするには、通常の原材料費の他に設備・施設の維持運転のための諸費用や、水道光熱費、補助材料費、石油などのエネルギーなどの各種の消耗品費などの諸費用を含めた広い意味での原材料費等に作業者の労力が加えられます。

つまり、「売上-原材料費-外注加工費-部品購入費-変動製造間接費や石油のような諸経費」が付加価値です。そして、付加価値によりカバーされるのが、人件費、償却費、利子、税金、役員賞与、配当、留保利益となります。なお、国内で生み出されたすべての付加価値を合計したものが、国民所得論でいう国民総生産 (GDP: Gross National Production) になります。

このように考えてくると、小生の理解では、スループット会計のスループット(=売上-真の変動費)と付加価値(=売上-原材料費-外注加工費-部品購入費-諸経費)の違いは、諸経費(=変動製造間接費、設備・施設の維持運転のための諸費用や、水道光熱費、補助材料費、石油などのエネルギーなどの各種の消耗品費)にあると思います。

上記のように理解していますが、皆様のご意見をお聞かせ頂ければ幸甚です。

小林 英三

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FAQ27 KI さんからの質問 「製品別原価について」

質問

TOCでは、製品別原価については正確に算出することはできないとの、立場をとっていると思います。 しかしながら、現実の場面では、製品ごとに原価の見積もりを顧客に提出する必要があります。

この場合、TOCでは、どのように対応したらよいのでしょうか。

見積り額には、当然間接費も何らかの形で含めておかねばならないはずだと思うのですが、TOC的にはどう設定するのか、と言ううことになるかと思います。

お知恵をお借りいたしたく、よろしくお願いいたします。

解答

以下に、小生の考え方を述べて見ます。

TOCでは、製品別原価については正確に算出することはできないとの、立場をとっていると思います。

厳密には、「TOCでは、製品別原価については正確に算出することはできない」ではなくて、「TOCでは、収益性の判定、したがって、最適製品ミックス導出を有効に行う意思決定に使える製品別原価は、伝統的な原価計算では、(正確にも、不正確にも)、決して算出することはできない」という立場です。なぜなら、ご承知のように、伝統的原価計算は「制約」を明示的に意識していないからです。

現実の場面では、製品ごとに原価の見積もりを顧客に提出する必要があります。この場合、TOCでは、どのように対応したらよいのでしょうか。

顧客が、何故、購入価格ではなく、原価を要求するのか、理由がわかりません。なぜなら、彼らの関心事は、購入価格、納入リードタイム、品質、納期の信頼性などのはずです。しかし、顧客が、どうしても、原価の提出を求めるなら、見かけ上、伝統的な原価計算方式に従った振りをした、「政策原価」を出せばよいでしょう。

TOCでは、ご承知の通り、あるトレードで、自分のところに、どれくらいスループットが発生するかどうかで、あるオファーを受けるか否かを決定します。まず、この原点を忘れないで下さい。

この原点を、十分に念頭に置き、顧客が、どうしても、原価の提出を求めるなら、かなり、政策的な観点から、いわゆる、コストワールド方式にしたがった「原価」ではなく(勿論、獲りたい商売を獲れる、と言う目的を達成できるなら、この原価でもかまいませんが)、発生するスループットを念頭に、「政策原価」をクックアップして提出すればよいと思います。

The Haystack Syndrome の「第16章(原書の93ページから99ページ)」をお読み下さい。

よく判っている筈のKさんから、このような質問が来るとは予想していませんでした。TOCの原点を思い出し、あまり、伝統的な規範に執りつかれないようにしたほうがよいと思います。

小林 英三

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FAQ28 NKさんからの質問 「TOC はどのような分野で利用できるのでしょうか」