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TOCコミュニケーション広場

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[整理No.016] 「昨今の日本の製造業は、生き延びられるか。」

(2003年3月初旬から中旬にかけて、APICSのCMSIGでも、"Manufacturing in China and not in the US"という題名で、似たような議論が起こりました。アメリカの製造業も、中国の大きな影響を受けているようです。)

(匿名氏からのメール)

小林様

TOCについてまだ理解できていない状態で質問をさせて頂くのも失礼とは思いますが、確信を得たいのです(まだ沸いてきません。)

ここでいう確信とはTOCを導入し効果があがるかではなく、私の勤めている会社の日本の生産工場が生き延びることができるかです。

小林様の範疇を超えているかもしれませんがよろしくお願いします。

私の勤めている会社は電子部品製造会社で、基本的には設備産業です。

従来の原価計算による製品の原価構成比率は日本生産で材料費:加工費:固定費=20:40:40これを中国生産にすると

材料費:加工費:固定費=50:20:30 となり原価は30%ダウンするとしています。

当社も昨年からのIT不況と中国メーカーの台頭により中国へ生産シフトすることに決まりました。

2年前から"日本式JIT"をやらされてきました?がこのありさまです。在庫は減りましたが、リードタイムはそんなに変わっていません。

スループットを増やそうと製品構成を材料費率の低い製品へシフトさせました。それ以上に市場価格がここ2年で60%はダウンしました。 原価低減が第一主義になっています。また、今は市場が制約になっている状況です。

このような状態でいまさら日本の生産現場でTOCを導入することに意味があるのでしょうか?

中国の人件費からくるコスト(市場価格)にはとても太刀打ちできないと思います。

中国の生産現場でTOCを導入し中国の生産工場と会社は生き残るかも知れませんが。(ちなみに、中国でのTOC事例はあるのでしょうか?)

大手電機メーカーはほとんど同じ状況です。(レイオフと中国シフトを打ち足している)TOCでこのような状況は回避できた(できる)のでしょうか?

電子部品メーカー勤務
匿名希望

(小林の最初の返信)

難しいご質問です。状況をよく把握しないでのご返事です。

中国の出来上がり原価は、日本を100とすると、70とのことですから、日本の原価合計を100円とすると、下記のような表が得られます。

材料費 加工費 固定費 原価 合計
日本 20 40 40 100円
中国 35 14 21 70円

上表が正しいとして、ここで、注目すべきは、日本の材料費が20円、中国の材料費が35円ということです。

TOCのスループット会計の考え方に基づくと、仮に、売値を150円とすると(加工費も、TOCでいう業務費用と考えられれば)、
日本の1個あたりスループット=150円-20円=130円
中国の1個あたりスループット=150円-35円=115円

利益は
日本の1個あたりの利益=130円-80円=50円
中国の1個あたりの利益=115円-35円=80円

以上の考え方が正しいとすると、他の条件を同一と仮定して、残念ながら、同一の製品を生産する限り、中国の方に軍配が上がると思います。

ところで、上記に含まれない要素に、顧客へ納品するリードタイムや納期遵守度(および、品質)があると思います。

仮に、「リードタイム」や「納期遵守度」の観点からみると、日本と中国では、圧倒的に日本がよいとします。とすると、これは、サービス・プレミアムであり、市場からこれらのプレミアムを得られる可能性があります。この点は、如何でしょうか。また、高技術、高付加価値製品へのシフトは如何でしょうか。

また、上記を、業務費用の観点から見ると、日本の業務費用を80円(加工費+固定費)から30円だけ引き下げられると、両者の利益は等しくなります。

(ちなみに、中国でのTOC事例はあるのでしょうか?)

寡聞にして、存じません。多分、広くは知られていないと思います。

事情をよく知らない状況での、咄嗟のお答えです。いささかでも、ご参考になれば幸甚です。

質問:製品開発機能は、日本に残すと言う考え方ですか。

小林 英三

追伸: 昔、誰かが話していたお話です。

二人のまったく同等の実力を持った「碁」の名人が二人いました。一人は黒を持ち、一人は、当然、白を持ちます。黒を持った人が、最初の石を置きました。白を持った人が考え始めました。暫くして、この人は「参った」と言ったそうです。こんなことは、決してありません。以上、ご参考。

頑張って、中国が対抗できない日本での生産の強みを生み出すように知恵を絞って見て下さい。

(匿名氏からの返事)

小林様

早速のお答え有難うございます。

漠然とですが1つの足しにはなる気がします。(失礼な表現の仕方で申し訳ありません。)

スループットは日本のほうが大きい場合があるのですね!?。ん~?。

納期、品質についてはまだ追い越されてはいないという程度に差が詰まってきました。

高技術、高付加価値製品へのシフトへ当然取り組んではいますが今の製品群の市場では10%に満たない数量になるでしょう。(これは思い込みかもしれません。TOCによる価格戦略が打てれば市場は広がるかも?)応用製品(部品+他部品)への展開も考えられますが・・・。

加工費+固定費を30円(37.5%)も引き下げれる?
確かにTOCから判断すれば無駄な投資が多々あったであろうと思われますが。

(質問:製品開発機能は、日本に残すと言う考え方ですか。)
そうです。

この考え方はTOCから判断するとどうなのでしょうか?(こういう様なTOC頼みは間違い?やる気の問題か!)

追伸:白でも先手を打ちたいものです。

(小林の二度目の返事)

(納期、品質についてはまだ追い越されてはいないという程度に差が詰まってきました。)

TOCでは、市場が制約のとき、TOCでは、競争優位をどのように実現するか、という発想をすると思います。具体的には、価格もさることながら、リードタイム、納期遵守度、品質、新製品などで優位に立とうという発想だと思います(例えば、「制約理論のインプリメンテーション」、Woeppel著、拙訳、ラッセル社発行のp26-28参照)。

顧客が求めているのは、価格だけではありません。Woeppelによれば、顧客が重要視するのは、納期の信頼性、納品までのリードタイムなどのようです。この辺に、日本工場の一つの可能性はないでしょうか。

ただし、ご質問の場合、自社の日本工場と自社の中国工場との競合です。会社の社長さんのお立場で考えれば、中国に魅力を感じるのは当然でしょう。そのとき、理屈から考えて、会社全体として、市場への製品、サービス提供で、日本工場の役割、中国工場の役割が相互補完的になるような、役割分担はできないでしょうか。例えば、中国は、量産品に特化し、価格で市場要求に応える、また、日本工場は、個々のオーダーの量は少ないが、高付加価値で、高品質、おまけに、短納期で納品する、そして、そのようなサービスに対して、市場からプレミアム価格を得る、などの発想はできないでしょうか。ただし、そこで生まれるスループットで、現在の日本のオーバーヘッドを支えることはできないかも知れませんね。残念ながら、高賃金は、高付加価値でのみでしかジャスティファイできないですね。中国人が低賃金でできるものを、日本人が高賃金でやっても、競争できませんですよね。

(高技術、高付加価値製品へのシフトへ当然取り組んではいますが、今の製品群の市場では10%に満たない数量になるでしょう。)

(これは思い込みかもしれません。TOCによる価格戦略が打てれば市場は広がるかも?)応用製品(部品+他部品)への展開も考えられますが・・・。

昔、「創業者利潤」という概念を聞いたのを思い出しました。他社にまねのできない、新しい画期的な商品を出した会社は、暫くは、最初に製品を出したと言うことで、利益が得られるということです。また、ボストンコンサルティングが、製品のポートフォリオを、キャッシュフローの 観点から一つの理屈を言っていたのも思い出しました。現在のキャッシュフローを支える製品群(ミルクカウ)、現在は、お金をどんどん飲み込むが、将来のキャッシュフローを支える(と期待される)製品群、これらの適切なミックスが、中長期的な企業の成長(存続)には不可欠である、といったような考え方だったと思います。(釈迦に説法で、ごめんなさい)

(加工費+固定費を30円(37.5%)も引き下げれる? 確かにTOCから判断すれば無駄な投資が多々あったであろうと思われますが。)

固定費の中に多分減価償却が入っていますよね。川崎、木更津を結ぶアクアラインを通ったことがありますか。湾岸道路は、常に、渋滞。アクアラインは、常に、スカスカです。トラックは、殆ど、見かけません。これは、もしかすると、道路公団の価格設定が誤っているからではないかと思います。つまり、償却を含めた原価計算から、通行料の設定を行っている、しかし、キャッシュフローの増加を考え、通行量の価格弾力性を考慮すれば、現在の通行料、片道3,000円を、1000円にした方が、収入はよくなるのではないかと考えます。同様に、「過去の無駄な投資」を考慮して、それに、現在の意思決定が縛られるようなことがあってはいけないようなきがしますが(この文章、的外れですか)。

(質問:製品開発機能は、日本に残すと言う考え方ですか。そうです。この考え方はTOCから判断するとどうなのでしょうか? こういう様なTOC頼みは間違い?やる気の問題か!)

小生にも、適切な答がよく分かりませんが、ご承知の通り、ゴールドラットの書いた「クリティカル・チェーン」という本の中に、プロジェクト管理についての考え方があります。この考え方は、新製品開発の期間を短縮するのに役立つと思います。上に書いた「創業者利潤」の概念と組み合わせると、一つの方向性が出てくると思いますが、如何でしょうか。

いくらかでも、お役に立ちましたでしょうか。ご奮闘をお祈り致します。

小林


結論的に、小生は、「高賃金は、高付加価値によってのみ、ジャスティファイされる」と考えています。高付加価値を生めなければ、賃金を下げるだけです。したがって、味も素っ気もないですが、高付加価値を生めない人の賃金を下げればよいのです。そして、それが嫌ならば、役人を含め、日本の社会で生活している人のすべての個人々々が、自助努力をして、世界で通用する自分の付加価値生産性を高め、高賃金をエンジョイすればよいのだと思います。簡単な事実です。無から有は生じません。規制緩和に大賛成です。

小林 英三

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