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[整理No.008] 投稿 YK 「真の変動費」について

【質問】

はじめまして。印刷会社に勤務しているYKです。

このHPや小林さんの著書「制約理論(TOC)についてのノート」をはじめ訳書のほとんどに目を通し、TOCについて勉強させていただいております。概論はほぼ理解したつもりなのですが、スループット会計の実践方法が理解できずにいます。

FAQ26「スループット、限界利益、付加価値はどう違いますか」において、かなり近いところまで理解できましたが、「真の変動費」について当社の状況に当てはめてみると悩んでしまいます。

以下、当社の内容につき簡略化して説明させていただきますので、場面ごとの疑問にアドバイスいただければ幸いです。

当社は印刷業です。いま、サイコロ型のキャラメルケースを受注したとします。

[準備するもの]

  1. 用紙(原材料です)
  2. 印刷の版(版画の版を作成するのと同じで、アルミの版を作成します)
  3. インキ(サイコロの目を印刷するため黒インキを用意します)
  4. 抜き型(サイコロの展開図に加工するための型を用意します)
  5. 金箔(1の目を豪華に装飾するため金箔を用意しました)
  6. 金箔を用紙に貼り付けるための凸版を作成します
  7. 包装材料等を準備します

[工程]・・・()は主に使用するもの

  1. サイコロの絵柄のデザインをします
  2. サイコロの展開図の設計をします
  3. 印刷版を作成します(アルミの版)
  4. 印刷します(用紙、インキ)
  5. 金箔を貼り付けます(金箔、凸版)
  6. 展開図に加工します(抜き型)
  7. 包装します(包装紙、テープ)
  8. 箱詰めします(ダンボール箱、ガムテープ)
  9. 出荷します

[考察]

「簡易スループット会計」では「用紙」が原材料で、その他は「業務費用」となりスループット=売上*用紙、利益=スループット*業務費用 と考えて良いと思います。

「真の変動費」とは
  1. 製品に直接付加されるもの・・・用紙、インキ、金箔
  2. (1)で用紙以外は使用量が計測できないので、用紙のみが真の変動費
  3. 製品に直接付加されなくても、製造する毎に消費されるものは真の変動費
  4. アルミの版、用紙、インキ、金箔、凸版、抜き型、包装紙、テープ、ダンボール箱、ガムテープ
  5. (3)で包装紙以降は全製品に対し共通のサービスなので、「業務費用」とみなす
  6. 出荷の際の運賃はスループット発生と連動しているので、真の変動費に入れる
  7. a.b.の工程はスループット発生と連動はしているが、材料費がないので業務費用である
  8. 凸版と抜き型は当社では出来ず、外部調達なので外注費となり、真の変動費である

以上、私なりの考えを表現させていただきました。

これらに対し、間違っているところなどを指摘していただけないでしょうか。

当社のような受注産業に対する事例が少なく、ご助言頂ければ幸いです。

お忙しい中とは存じますが、何卒宜しくお願いいたします。

[整理No.008] 回答 小林英三

メールを有難う御座いました。

[「真の変動費」について当社の状況に当てはめてみると悩んでしまいます。]

既に、YK様が書物でお読みになったこと以上のことを、小生も、存じておりません。例えば、なぜ、製造間接費を業務費用にいれるのか、などは、悩み深いことです。この区分の線引きは、実際の場では、結構、難しいと思います。

どなたかがいわれておられ、また、小生も同感なのですが、TOCのよいところは、「かなり、いい加減でよい」ことだと思います。これを、手掛かりに、愚考を述べてみます。

1) そこで、このいい加減さを、スループット会計でも使うとするなら、要は、

『「伝統的な原価計算」から得られる収益性についての意思決定』と
『「真の変動費」についての、データ的ないい加減さ(曖昧さ)を残したまま(つまり、変動費か固定費かよくわからないデータを、例えば、変動費として扱う、または、固定費として扱うということ)、スループット会計を適用して、その結果を使って行う意思決定』

のどちらが、より多くのスループットを生む意思決定なのか、ということが重要なのだと思います。

2) 一般に、TOCの文献では、あるオーダーの履行のために発生する費用、逆に言うと、あるオーダーがなければ発生しない費用を「真の変動費」といっています。釘だとか、ニスだとか、ツール類とかは、業務を継続するときに、必ず、必要になる副次的な原材料なのですが、多分、オーダーにリンクしては、購入されていないでしょう。だから、製造間接費として扱われているのかな、と思っています。

3) 確かに、あるオーダーの履行のために必要な原材料ではあるけども、発生する金額が大きいか、無視してもよいくらいの大きさであるかも、変動費としてあつかうか、それとも、固定費か、の区分に影響すると思います。つまり、「スループット会計」の考え方に沿った意思決定が妥当に行えるかどうかを念頭に、真の変動費であると考えられるものでも、実際の適用では、無視してしまうという考え方も必要のような気がします。

以上を述べた上で、間違っているかも知れませんが、YK様の区分についての小生の「感覚」を書いて見ます。勿論、印刷業界の事情にまったく無知な人間の「感覚」です。

「真の変動費」とは

  1. 製品に直接付加されるもの・・・用紙、インキ、金箔
  2. (1)で用紙以外は使用量が計測できないので、用紙のみが真の変動費
    以上、宜しいかと思います。
  3. 製品に直接付加されなくても、製造する毎に消費されるものは真の変動費
    アルミの版、用紙、インキ、金箔、凸版、抜き型、包装紙、テープ、ダンボール箱、ガムテープ
    インキ、金箔、テープ、ガムテープは製造間接費? その他は、真の変動費の可能性があるのでは?
  4. (3)で包装紙以降は全製品に対し共通のサービスなので、「業務費用」とみなす
    上記、ご参照。
  5. 出荷の際の運賃はスループット発生と連動しているので、真の変動費に入れる
    同意します。
  6. a.b.の工程はスループット発生と連動はしているが、材料費がないので業務費用である
    同意します。
  7. 凸版と抜き型は当社では出来ず、外部調達なので外注費となり、真の変動費である
    同意します。

以上、少しでも、お役に立ったならば嬉しく存じます。ポイントは、意思決定がよくなるかどうかだと思います。

なお、最近、感じつつあることを申しますと、「TOCにインプリメンテーション」とは、「TOCの概念に基づくBPRである」と理解すると判りやすいのではないか、ということです。つまり、「TOCによる生産革新」を中心にすえた「業務革新」という意味です。具体的には、見積依頼から、売上債権回収までの全部の業務フローを対象に、漸進的(evolutionary)ではなく、革新的(revolutionary)な変化を実現するということです。もしかすると、制約は、現場で行なわれる物理的な生産過程ではなく、その前後の業務フローの中にあるかもしれないという考え方です。

もしかすると、弊訳「制約理論(TOC)のインプリメンテーション」(Woeppel著)の第5章、第6章の「会社A」の例が、ご参考になるかも知れません。また、添付の「Moore社」の例(近々、抄訳掲載予定)も、ご参考になるかも知れません。

ご健闘をお祈りいたします。

小林 英三


小林さん、ご返答いただきありがとうございます。
お忙しい中、丁寧に解説していただき、非常に参考になりました。
「ポイントは、意思決定がよくなるかどうかだと思います。」
といわれたところは、本当にスーと頭のもやもやが消えていきました。
そうですね、TOC、TOCとばかり考えて、私の頭の中ではTOC導入が目的になってしまっていました。
このあたりを念頭において、もう一度じっくり検討してみたいと思います。
本当にありがとうございました。

YK

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