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[整理No.004] 投稿 桑名市在住 TM氏
TOCとJITの実現環境の比較について

TOCとJITの比較の中でJIT環境を実現するのには多くの人々の参画が必要、一方TOCは多くの人々の参画は必要ない。としていました。

しかし、講義の中で一人でのTOCの実行はだめで全員がTOCを理解していないといけない。という説明があったかと思います。

私たちがこれから古い体質の工場を動かしていくのに主要な人たちの理解だけで進めていいのか、作業員全員まで理解させてからのほうがいいのか教えてください。

[整理No.004]
MSI 小林英三 TOCとJITの実現環境の比較についてのコメント

まず、言葉足らずをお詫びいたします。

TOCとJITの比較の中でJIT環境を実現するのには多くの人々の参画が必要、一方TOCは多くの人々の参画は必要ない。としていました。しかし、講義の中で一人でのTOCの実行はだめで全員がTOCを理解していないといけない。という説明があったかと思います。

大変、良い質問だと思います。気分的には、前言撤回のほうが、容易なような気もしています。しかし、そうもいえないので、いくらか、説明したいと思います。

1.上記のJITについては、アメリカの製造環境での話で、もしかすると、「日本では違う」という考え方もあるかもしれません。という前置きを置いた上で、「シンクロナス・マネジメント」の第7章(邦訳235ページ)から、下記の引用を致します。

引用

導入開始から定着までの期間が長く、かつ、難しいこと

JIT論理システムを上手に展開するには、生産環境と管理風土を大幅に変更しなければなりません。経験的にいって、実際に、JITシステムがうまく稼動するようになるまでには、何年も必要です。インプルメンテーション・プロセスは、通常の生産業務遂行の妨げとなるので、また、この間、資金が掛かり、経営者は大きな忍耐を強いられるので、JITシステムがうまく稼動するようになるまでの時間は、なかなか、耐えがたい時間です。

JITは、伝統的な生産環境が持つ考え方とは、非常に異なった哲学で、責任感のたかい、よく訓練された、かつ、教育レベルの高い労働力を要します。JITシステムを成功させるには、究極的には、品質問題を完全に近いまで除去し、プロセス全体で、段取時間を大幅に短縮し、その他の混乱の原因となる変動性を大幅に小さくしなければなりません。これらの問題の多くは、その解決が難しく、それらに適切に対応するには長い時間が必要です。

上記引用の後段にしるされているように、「JITは、(少なくとも、アメリカでは)伝統的な生産環境が持つ考え方とは、非常に異なった哲学であり、責任感のたかい、よく訓練された、かつ、教育レベルの高い労働力の育成をまず行い、品質問題を完全に近いまで除去し、プロセス全体で、段取時間を大幅に短縮し、その他の混乱の原因となる変動性を大幅に小さくしなければならない」ので、その実現のためには、「多くの人々の、長期にわたる、献身的な参画が必要」と考えられているようです。

2.しかし、講義の中で一人でのTOCの実行はだめで全員がTOCを理解していないといけない。という説明があったかと思います。

まず、Woeppelの"Manufacturer's Guide to Implementing the Theory ofConstraints"の第2章からの引用を下に記します。

引用

著者は、一人の人物がシステムの全体を理解して、部分的なインプリメンテーションを行うことを阻止しなければならないという考え方を持っています。なぜなら、インプリメンテーションを成功させるには、管理の行い方が完全に変わらなければならないからです。したがって、マネジャーの多くが、TOCの哲学を理解し、信奉し、実行するような状況で、インプリメンテーションを行う必要があります。 しかし、多くの組織風土の変更の場合とは異なり、マネジャー全員の完全な支持は必要ありませんが、インプリメンテーションを邪魔しないという一般的な合意の形成は必要です。多くの人々がやって見ようとする限り、行う変更は、ちゃんと、機能します。こうして、ひとたび、システムが動くようになると、人々は、昔の方式に戻ろうとは思わなくなります。

上記のWoeppelの考え方が正しいとすると、DBRのインプリメンテーションは、「インプリメンテーションを邪魔しないという一般的な合意の形成」があれば、「多くの組織風土の変更の場合とは異なり、マネジャー全員の完全な支持は必要ない」ということになります。極端な場合、全体を理解している人が、「ワンマン」で、強烈なリーダーシップを発揮して、DBRをインプリメンテーションすれば、リードタイムが短くなり、納期遵守度がよくなるという「事象」が起こり得るといっています。そして、その事象は数ヶ月という短期間で起こり得るという事象です。しかし、Woeppelは、「この方法では、DBRは定着しない」と述べています。その理由は、他の人が、「なぜ、DBRの考え方を実行すると、リードタイムが短くなり、納期遵守度がよくなるか」ということを理解していない、そして、その理解がないと、古い業績測定尺度が復活し、古いやり方に戻ってしまうからだといっています。小生の知人にニュージーランド人がおり、彼は、2年を掛け、DBRのインプリメンテーションにより、大きな成果を挙げました。しかし、彼の上に、新しい製造部長が着任しました。彼は、別の意味の頑固な人物で、彼の信ずるところに基づき、伝統的なシステムに戻りました。友人のニュージーランド人は、まったく、不満で、その会社を辞めました。

以上のことを述べた上で、次のご質問である「私たちがこれから古い体質の工場を動かしていくのに主要な人たちの理解だけで進めていいのか、作業員全員まで理解させてからのほうがいいのか教えてください。」にお答えしたいと思いますが、その答は、「シンクロナス・マネジメント」第2巻第8章のケーススタディをお読みになれば判ると思います。つまり、社員全員が、それぞれの立場で、自分の個々の行為が、スループット、在庫、業務費用にどのような影響を与えるかを良く理解した上で、彼らなりの意思決定を行うようになっている方が、そうでない場合よりも、TOCの成果がより大きくなるという考え方だと思います。

結論

「主要な人たちの理解だけで進めてよい。しかし、時間の進展と共に、作業員全員まで理解させて行くようにしたほうが、TOCからえられる成果が大きくなる。」恐らく、TOCの導入は、まず、工場から始まり、いずれ、販売部門、購買部門、協力会社へと広がって行かせなければなりません。そして、その考え方の浸透、徹底には、やはり、時間が掛かるでしょう。ただし、JITとは異なり、それなりの成果が短時間で現れるということでしょう。

以上で、よろしいでしょうか。

なお、toc-japanの「TOC最新情報リスト」記載の『No.001:テーマ「手動によるDBRインプリメンテーションとソフトウエアによるDBRインプリメ ンテーションの良い点、悪い点」(2001年3月-CMSIGでのメール交換)』も、この議論に関連しており、ご参考になると思います。

小林英三

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