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整理No.002 制約であることの判断基準

[整理No.002] 投稿 小山太一 (2001.06.01)

複数制約がある時のその間の矛盾の解消の考え方、およびそのアルゴリズムとは?

DBRではまず制約のスケジューリングを確定させたのち投入工程でのスケジュールを決定する物と理解しておりますが、このような非制約工程でのスケジューリングは投入工程だけでよいのか?その他の非制約工程はスケジューリングせずに本当に上手くいくのか?

[整理No.002] 投稿 MSI 小林英三 (2001.06.01)

制約であることの判断基準とは?

Mark Woeppelは、その著書"Manufacturer's Guide to Implementing the Theory od Constraints"の中で、次のように書いています。

引用

『伝統的な方法で運営されている生産環境(通常、キャパシティに大きな余裕がある)では、このステップは、比較的に容易です。仕掛品の待ち行列が、いちばん長いところはどこでしょう。この質問に答えることで、制約の場所が判明する場合もあります。もちろん、伝統的な方法で運営されている生産環境では、在庫の山が方々にあります。したがって、在庫の山がいちばん大きいところが一箇所ではないかも知れません。このような場合、このステップ(5段階継続的改善プロセスのステップ1)でのゴールは、ある資源を制約であると「宣告」し、ある資源が制約であると前提して、物事を先に進められるようにすることです。ここでの考え方は、観察した一つの事柄から、これが制約であると決定的な結論を得ることは、必ずしもできるとは限らないということです(もちろん、できる場合もあります)。ここで行いたいことは、こうして、ある資源を制約とし、論理的な議論を行って、インプリメンテーションをどこから開始するかということ決定することです。

この最初の段階で、正しく制約を識別したかどうかについて、あまり、悩まなくて結構です。読者の皆さんも、やがて理解できるようになると思いますが、たとえ、間違っていたとしても、工場の業績は、依然として、真の制約により制限されているので、「間違ったところ」を制約と考えて、インプリメンテーションを開始すれば、「正しいところ」が即座に現れてきます。もし、少々の曖昧さを我慢できれば、このアプローチは機能します。著者は、以下のような質問をして見ます。

  • どこで仕事が滞りますか。どこに仕事の待ちの山がありますか。
  • どこで、いちばん多く、問題が発生していると思いますか。

部品生産部門や、複数の他の工場から部品を受け取っている組立環境では、制約は「不足部品リスト」から見つかることがあります。したがって、足りない部品の督促を行うとき、どこにいちばん足を運ぶか聞くのもよいことです。

  • 稼働率の高い資源がありますか。

多くの工場で、資源の稼働率を追跡するのに、多くの労力を使っています。それを業務としている人に、どの資源の稼働率がいちばん高いかを聞くのも、一つの方法です。かりに、それが制約であるとするなら、その資源では、仕事がなくなることはなく、常時、スケジュールに送れています。そのような資源では、誰かがやりくりして、ともかく仕事をこなそうとしています。

  • 「制約と考えられる」資源がありますか。

この質問をする場合には、注意して質問しないといけません。そして、例えば、マネジャーから答を得たとしても、他の証拠と併せて、それを確かめないといけません。工場でよく見られることですが、生産現場を管理する立場の人たちが、特定の資源を「クリティカルな資源」、「重要資源」と決めている場合があります。そして、そのような資源は、通常、その資源を動かし続けないと、下流の資源に処理する仕事がなくなり、作業を停止せざるを得なくなってしまうような資源です。』

上記の引用の中の『この最初の段階で、正しく制約を識別したかどうかについて、あまり、悩まなくて結構です。読者の皆さんも、やがて理解できるようになると思いますが、たとえ、間違っていたとしても、工場の業績は、依然として、真の制約により制限されているので、「間違ったところ」を制約と考えて、インプリメンテーションを開始すれば、「正しいところ」が即座に現れてきます。』という部分に注目して下さい。

この感覚は、「制約理論(TOC)についてのノート」にも書きましたが、その部分を引用します。

引用

TOCを導入し、展開するには、当然、まず、制約資源を見つけなければなりません。その見つけ方は試行錯誤的でよいようです。最近のCMSIGのメールでこんなやりとりがありました。ある会社でTOCを導入することが決まり、ある人が担当者になりました。彼は、手持の資料から計算し、制約資源を見つけようとしました。しかし、彼は、結局、どうやって制約資源を見つけたらよいかわからないので、CMSIGのメーリングリストに助けを求めました。その答は、「君は、なにも計算なんかしなくていいんだ。なぜって、計算するには貴重な時間を割かなければならないし、結果だって、あまり、役に立たないよ。まず、現場に出向き、生産プロセスを調べ、どこで在庫が山積みになっているか確認するんだ。もし、オーダーが遅れるのなら、受注から出荷までのプロセスのどこで引っかかっているかを調べるんだ。 そうすると、おのずと、どこがボトルネックかわかってくるよ。オーダーがよく引っかかってしまうラインの人たちに聞いてごらん。生産部門の中で督促を行っていないなら、制約は市場だよ。確からしい答が見つかったら、たぶん、それがボトルネックだよ。もし、ボトルネックと思しきものがいくつか見つかり、これがボトルネックだというはっきりした結論が得られないなら、ボトルネックはいくつかの候補の間を動いていると思うよ。そうしたら、どれでもいいから、一つ選んで、5段階継続的改善プロセスを繰返すんだ」

というものでした。要約すると、制約資源を見つける方法は、かなり、直観的、試行錯誤的でよいといっているように思います。

TOCで重要視しているのは、5段階継続的改善プロセスを開始して、軌道に乗せることです。最初の制約の識別が間違っていても、[あとで、直せばよい]と気楽に考るとよいようです。

そうはいっても、具体的には、どのようにして制約資源を見つけたらよいのでしょうか。制約の識別は、V型工場、A型工場、T型工場で異なります。詳細は、アンブル、スリカンスの「シンクロナス・マネジメント」の第2巻の第4章、5章、6章に、V型工場、A型工場、T型工場のそれぞれでの制約の識別法が、丁寧に書かれていますので、そこをお読みになって下さい。

なお、TOCのインプリメンテーションを開始する時点では、工場の中の制約が物理的な制約であることは、10%くらいであり、現実の制約の殆どは「方針制約」であるといわれています。

複数制約がある時のその間の矛盾の解消の考え方、およびそのアルゴリズムとは?

「制約資源が複数ある」という表現は、理屈から言うと、矛盾していると思います。理屈的には、制約資源は一つです。しかし、「制約に近い資源」は、複数存在し得ると思います。MAPICS Inc.社が販売している、日本で唯一入手可能なHaystack Compatible Systemである製品「Thru-Put」では、複数のドラムの設定を許します。詳しくは、Thru-Putのマニュアルをご覧頂きたいと思いますが、要約すれば、複数のドラムに順位を付け、先ず、もっとも影響の強いと考えるドラムでスケジューリングし、次いで、それを前提に、二番目のドラムに関係する部分をスケジュールし、順次、このようにして、矛盾のないスケジュールを作成して行きます。ここで重要なのは、「どのスケジュールがよいスケジュールであるか」という判定です。最初から、自動的に最適なスケジュールをもたらすアルゴリズムはないようです。したがって、Thru-Putでは、スケジュール作成担当者が、インタラクティブにスケジューリングを行い、人間による「意思決定」を介在させて、個々のスケジュールのもたらす「スループットの大きさ」などを参考にして、「最も良いスケジュール」を得ます。小生は、これは、Thru-Putの長所であると考えます。

DBRではまず制約のスケジューリングを確定させたのち投入工程でのスケジュールを決定する物と理解しておりますが、このような非制約工程でのスケジューリングは投入工程だけでよいのか?その他の非制約工程はスケジューリングせずに本当に上手くいくのか?

TOCの考え方の根底にあるのは、「スループットを最大にする」ということであるのはお判りだと思いますが、ここで、「スループットを最大にする」ということは、原材料を購入し、加工して、(生産ではなく)販売することにより得られるスループットを最大にしようとすることです。したがって、制約資源で処理するものは、必ず、需要と結びついています。そして、原則として、在庫になるようなものは、一切、生産しない計画を作ります(唯一の例外は、顧客の求める納入リードタイムが、生産リードタイムよりも短い場合のみです)。

こうして、計画された制約資源のスケジュールに対応する投入工程のスケジュールに従い、原材料は投入されます。そして、制約でない資源は、定義的に未利用キャパシティを持っています。制約でない資源は、上流工程から流れてくるジョブを「先入先出」で、可及的速やかに処理し、下流工程に流すことを期待されています(流れてくる順は、ジョブの優先順位を示しています)。これが、TOCでいう「従属」です。「従属する」ということは、制約でない資源が、「勝手に、制約資源のスケジュールと違ったことを行わない」ということを意味しています。

従来の、伝統的な生産方式では、部分最適を求め、マネジャーは、個々の工程の作業能率と稼働率を良くすることを目的に、仕事を行うことを求められていました。これは、資源や原材料の不適切な割当てを惹起し、片や、顧客へのオーダーが遅れてしまい、片や、売れない在庫を作ってしまう現象を起こしてしまう原因でした。これは、リードタイムを長くし、納期遵守度を悪化させる原因です。TOCの用語にスティーリング(stealing)という言葉がありますが、作業能率と稼働率を重視するあまり、制約でない資源が、本来の優先順位を崩してしまい、手許の部品を流用したり、優先順位の低いジョブを先行させたりしてしまう現象を指しています。このような現象を避けるための、最も簡単な方法は、余分なジョブは一切、投入しないことです。こうして、制約資源以外の非制約工程は、統計的変動があるという現実の中で、スケジュールを持たなくても、上流工程から流れてくるジョブを「先入先出」で、可及的速やかに処理し、下流工程に流すことで、工場全体としての、スケジュール通りの生産に貢献できます。したがって、制約でない資源のスケジュールはいらず、上手く行くと言われています(もっとも、スケジュールを与えることを否定しているわけではありません)。

DBRではまず制約のスケジューリングを確定させたのち投入工程でのスケジュールを決定する物と理解しておりますが、このような非制約工程でのスケジューリングは投入工程だけでよいのか?その他の非制約工程はスケジューリングせずに本当に上手くいくのか?. これまで、TOCでの文献では制約資源のスケジューリングに焦点が当たっているように思いますが、JITでもまれた日本の製造業でボトルネック資源が遊んでいるのをボーと眺めているような企業は日本ではないと思います。(確かに不完全ではあるでしょうが)したがって、制約工程を見つけ使い切る事を強調しても、それはすでに実施されていることであってピンとこないと思います。

このことについて、小生には、お答えする資格がないと思います。

しかし、二つほど触れさせていただきます。

その一は、TOCでいう「制約」という意味で、現実の状況での「制約」は、物理的な資源ではなく、方針制約である場合が殆どだという(アメリカでの)事実です。Woeppelは、彼の著書"Manufacturer's Guide to Implementing the Theory of Constraints"の中で、次のように述べています。

引用

方針とは、ルール、業績測定尺度、条件のように、組織の行動を左右するものです。方針制約は、最も普通に見られる制約で、TOCを導入しようとする組織の持つ制約の90%は方針制約です。方針制約は、それが組織の制約とはならないようにするのにかかる費用が、一番、小さくてすむ制約です。ゴールドラットの小説『ザ・ゴール』の中に、方針制約の例がたくさん出てきます。バッチのサイズ決めのルール、資源の稼動についてのガイドライン、段取ルールなどは、それらが、生産システムが、より高い業績(スループット)を達成することを阻んでいるとするなら、すべて、方針制約であると見做します。

Woeppel(だけでなく、コックス、スペンサーも、アンブル、スリカンスも)組織の持つ制約の殆どが方針制約であると言っていますが、もし、日本でもそうだとすると、Woppelが言うように、TOCのインプリメンテーションの当初では「方針制約が見つかるにつれ、それらをしらみ潰しに、解消して行くこと。」が重要だと思います。このような見方や意識は、日本の工場で、存在しているでしょうか。

その二は、TOCのサクセスストーリーとして挙げられている成功例に、「JITから乗り換えた企業」の例が複数触れられていることです。そこには、恐らく、重要なメッセージが含まれていると思います。

すなわち、論理生産システムとして、TOCの方がJITよりも優れているという主張です。事実、アメリカでは、JITからTOCに乗り換えた企業があるようです。例えば、Ford(電子部門)は、原材料投入から出荷までのリードタイム(全製品、全サイト)が、改善プロジェクト以前は10.6日であったものがJIT導入後2年で8.5日、その後、JITからTOCに乗り換えたら、TOC導入後1年、2.2日になったという事例や、受注生産の食器戸棚を生産しているある会社は、従来、5-6週間かかっていたリードタイムを、JITを導入して、10日に短縮できたが、制約管理方式で、2日にまで短縮できたというような事例が報告されています。このあたり、どのようにお感じになりますか。ご自分なりの納得が必要なような気がします。

DBRではまず制約のスケジューリングを確定させたのち投入工程でのスケジュールを決定する物と理解しておりますが、このような非制約工程でのスケジューリングは投入工程だけでよいのか?その他の非制約工程はスケジューリングせずに本当に上手くいくのか? 小林さんは、MAPICS社のスループットを拡販するお仕事をされていると思いますが私は、スループットがDBRの実装をどのような形で行っているのか、またアメリカで導入済みの企業がどのようにそれを運用して実効をあげているのか大変興味を持っております。(中略) このようなセミナーを設けていただければ是非参加させて頂きたいと思います。

NECユニバーシティで、下記のようなセミナーが、3ヶ月に1回くらい、開催されています。次回は、6月7日、8日です。

「業務プロセス改革のためのTOC導入実践研修会」

業務改革や生産改革をサポートする方法論として、米国では、すでに多くの主要企業がTOC(制約条件理論)に注目し、導入しています。

TOCにおける

  • ボトルネックを徹底的に活用することにより、生産ライン全体の効率を最大にする生産スケジューリング理論DBR(ドラム・バッファ・ロープ)
  • リソースの能力制約を考慮した新たなプロジェクト日程管理手法CC(クリティカルチェーン)に関し、講義、生産シミュレーション、演習および実例の解説を通して「TOC」 の基本をわかりやすく解説致します。

研修内容 (第一セッション(2日間)、第ニセッション(1日間)のみの受講も可能です)

1.第一セッション
【生産スケジューリング:DBR】
1日目 2/5 9:00 ~ 18:00
  2日目 2/6 9:00 ~ 17:00
1)「生産プロセス改革のためのTOC/DBR実践法」
最新の生産システム改善法である「TOC」(制約理論)の全体像を解説する。
真の利益を求める「スループット会計」について、演習問題を通して解説する。
「TOC/DBRスケジュール手法」について、ダイス(生産変動発生用)とポーカーチップ(仕掛品または製品)を使用した生産シミュレーションを通して解説する
TOC/DBRのスケジューリングアルゴリズムを搭載したAPSシステム(Thru-Put)を使用して、実務で使える最新のスケジュール手法を解説する。

2)「NECグループにおけるTOC実践事例-1」 2日目(1時間)
●NEC山梨における「TOC思想活用による生産革新活動」の解説する。
2.第二セッション
【プロジェクト管理:CC】
3日目(2/7) 9:00~17:00
1)「クリティカルチェーン解説と日程計画演習」
開発技術者などの人的リソース制約を考慮したプロジェクト日程の立案、効果的な日程余裕(バッファ)の設定と管理といった、プロジェクトを当初計画した納期通りに完了させる「クリティカルチェーン」のポイントを、シミュレーション検討を交えながら詳細に解説する。

2)「NECグループにおけるTOC実践事例-2」 3日目(1時間)
システム製品の海外輸出プロジェクトに「CC」と「TP」を適用し、プロジェクト日程短縮に成果をあげたプロジェクト管理業務における『TOC』実践事例」を解説する。
講師 1-1項 MSI(株) 会長 小林英三 殿
    MSI(株) 製造コンサルタント 門田善裕 殿
    システムYou(株) Thru-Put コンサルタント
菊池逸郎 殿
  1-2項 NEC山梨 デバイス統括部 i21推進室 生産革新推進課長
相馬廣治 殿
  2-1項 NECユニバーシティ 生産技術研修所 教育マネージャー
櫻井 良樹
  2-2項 ネットワークマネジメントソリューション(事)
    コラボレーションセンター エキスパート 飯塚 正志 殿

詳しくは、下記にお問合わせ下さい。

NECユニバーシティ 生産技術研修所 主任 大西
TEL:044-435-1064 FAX:044-435-1780 E-MAIL:onishi@UNIV-32632.star.nec.co.jp

以上、いささかでも、何かのご参考になれば幸いです。

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