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整理No.001 最大の問題 ?  TOCは何故、日本で普及しないのでしょうか?

質問者は、「制約理論(TOC)についてのノート」を購読し、読者カードでご意見をお寄せいただいた北九州市在住のK.Sさんです。

[整理No.001] 投稿 MSI 小林英三(2001.05.01)

「なぜ、日本でTOCがなかなか普及しないか。

最近、TOCに深い関心を持っておられるある大学のある先生が、「日本の学会では一部にTOCに関しては冷ややかな反応を、というよりは何か触れてはいけない物にふれているかの反応を示される先生方がいて、とまどいながらその背景とか真意を探っている面もあります」とメールで書いて寄越されました。

それで思い出すのが、かって、APICSのCMSIGで「Cross the Chasm」という議論が、延々と行われたことです。なぜ、多くの人が、「コスト・ワールド」から、「スループット・ワールド」に移れないかということについての議論です。

その議論を要約し、また、このことについて、その他の方々が、かって、小生に教えて下さったことをうる覚えですが、要約すると以下のようなものになると思います。

  1. コンサルタントはお金:伝統的原価計算やABCに関する商品を飯の種にしているコンサルタント会社やコンサルタントは、溝を越えると食べてゆけない。現実に、コンサルタント会社が、これから、億の単位の収入、もしくは、10億の単位の収入を上げているとすると、先ず、これらのサービスからの収入がなくなる、次いで、これまでのサービスが(もしかすると)間違ったことを指導していたということを認めなければならない場合もありうる。(このくだり、語弊があったらご容赦願います。)
  2. 学者:日本人の実業界のある人が、小生に、次ぎのようなことを言ったのを記憶している。「大学の先生にとり、TOCを研究対象とすることは、"ハイリスク、ローリターン"である」。これまで、もしかすると、一生掛けて築いてきた自分の業績を否定しなければならない。これは、大変、辛いことである。小生の、ある友人は、「TOCはよく出来ている、反論しようとしたが、俺は、お釈迦様の掌の中にいるような気分だ」と書いて寄越しました。
  3. 企業の経理部の人たち:企業の経理部の人たちは、GAAP(generally acceptedaccounting practice)に忠実に従うことで月給を貰っている。「スループット・ワールド」は彼らの「バイブル」の外である。
  4. 理屈っぽくない人:無関心(TOCを理解するには、理屈が必要)。

CMSIGの議論の中では、アメリカの会計士協会(? 名称は厳密ではありません)みたいなところと、TOCについて、公開の場、ないしは、必要なら、非公開で、対決の議論を行おうということさえ、まじめに議論され、会計士協会の長へのレターのドラフトまで作成されましたが、その後、どうなったかしりません。

CMSIGで、もう一つ、昨年でしたか、「TOCは宗教か」という議論さえもありました。要は、「溝」の向こうとこちらがあり、向こうの人たちは、(多分、上述のような理由で)、溝を越えてこちらにこられない、こちらのスループット・ワールドの人たちは、この、理に適った考え方、常識に適った考え方が、溝の向こう側の人は、何故、判らないのか、と不思議に思い、説得しようとする、しかし、相手は、諸般の理由(事情)で乗ってこない、ということで、この議論が、正に、宗教論争のようになってしまうということです。

いま、今年出た、Woeppelの"Manufacturer's Guide to Implementing the Theory ofConstraints" なる本を訳していますが、その第6章に、「TOCのインプリメンテーションを行う際、実は、そのことは、誰かさんの[神聖な牛を屠殺しようとしていること]を冷静に認識し、それへの対応をきちんとやらないと、TOCのインプリメンテーションが危険にさらされるという趣旨のことが掛かれています。すなわち、TOCのインプリメンテーションは、大きな変化を伴うということです。これも、TOCの普及を妨げている理由の一つでしょう。

あるところで、ある人が、小生に向かい、「日本でも、TOCが普及すると思うか」と質問してきました。小生は、「基本的に、どの方針(生産方式)を採るかは、社長が決めることです。TOCが、MRP IIやJITよりも優れていると判断したら、社長は、TOCを採るだろうし、そう判断しなければ、TOCを採らない」と答えました。理屈から言えば、その結果、競争力を失えば、それは、TOCを採用しなかった社長の責任です。しかし、「多くの日本の社長」は「TOCの存在」すら知らない、したがって、「TOC検討し、それを採用する」という意思決定すらできないのが現状でしょう。

TOCが普及しない理由の一つは、TOCが、これまでの考え方と、あまりにも違い、したがって、胡散臭い考え方のように見えてしまうことにもあるようです。

CMSIGでは、「TOCは、それぞれ、相互に非常に異なるロジスティックス分枝、業績システム分枝、問題解決/思考プロセス分枝で構成され、そして、そこで使われている用語が難しく、おまけによい教科書がない」ということも議論されていました。

ということで、小生は、生産理論について、なんらの過去(の業績)を持たない門外漢ですが、しかし、日本の製造業のことが心配です。したがって、小生みたいな「過去にしがらみ」のない人間が、日本社会にTOCの情報を提供するのがよいと考え、「本」という形で、アウトプットを出している次第です。

以上、取り留めのないことを書いてしまいましたが、学会などの場で、この「冷ややかな姿勢」のことに関連し、「TOCは、なぜ、日本で普及しないのか」などや、「コスト・ワールドとスループット・ワールドのチャンピオンの公開討論」などをテーマとして取り上げて議論するとよいのではないかと思います。

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E. Kobayashi
+81 466 28 4503
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訳書「数理計画モデルの作成法」H. P. Williams,産業図書
  「制約管理ハンドブック」コックス、スペンサー,ラッセル社
  「シンクロナス・マネジメント」アンブル、スリカンス、ラッセル社
著書「制約理論(TOC)についてのノート」ラッセル社
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[整理No.001] 投稿 会社員 塩田久仁夫(2001.05.11)

コミュニケーション広場の「整理No001:最大の疑問-TOCは何故日本で普及しないのでしょうか?(2001.04.19)」で読者カードに感想文を書いた者です。

小林先生、大変わかり易い解説をして戴きありがとうございました。これで、状況が少しわかりました。

上記の疑問を抱いた背景について、この広場をかりて少し弁明させて戴きます。

  1. おことわり:小生はProduction Control(生産管理?)についてはズブの素人です。勿論、実務経験もありません。TOCについては、縁あって約1ケ月前から勉強をはじめました。そして、現在は文献2,3,4に頼っています。
  2. 弁明(1):謎の「Dead Time…7年…」
    小生の頭の中はこうです。即ち、海外製の新理論、新技術または新方法が凡そ出来上がったとします。そうすると、約1年後には学会誌、協会誌にその紹介記事と論文、専門書の一覧が載ります。そして数ヶ月遅れて日本の諸先生の論文が多数掲載されます。さらに1年位遅れて続々とケーススタディが多数載ります、つまり普及化完了です。

    このパターンを今回、当て嵌めてみました。例えば、文献4の前版が1990年刊行ですから、1991年頃には紹介記事が出なければなりませんが…。実際は7年遅れで紹介記事(本)が出ていますので、この「Dead Time」は何?となり表題の疑問となったわけです。

  3. 弁明(2):日本の製造業ガンバレを読んでギクッ!!
    小生がかつて読んだ本が文献1です。出版は1987年です。この頃は金融業、製造業が多数アメリカに上陸し、雑誌のカバーに「ニューヨークの自由の女神」が着物を着て登場した頃と記憶しています(間違い?)。小生にはこの頃の風景が太平洋戦争時の「緒戦の勝ち戦モドキ」のように映りました。それで、文献1を読んだ次第です。太平洋戦争ではアメリカは短期間で実によく日本を研究し、日本を凌ぐ戦略と戦術を編み出したことは良く知られていますネ。

    ところで、文献1で記憶に残っていたのが作家(?)の堺屋太一さんによる次の文章です(アンダーラインは小生が追加)。勿論、この文の全てを記憶していたわけではありません。今回、再度読み直しての転載です。

    「結論づけるなら、日本帝国海軍の敗因の根本には、本来の機能重視を忘れ、ひたすら共同体意識に浸りきったことがあった。このことは、企業に引き移して考えるなら、社内融和ばかりに心配りをして利益追求を忘れているという状態に他ならない。こうした企業がやがて敗北の道を辿るであろうことは十分に予測がつく。

    では、企業戦争のなかで生き残るにはどうすべきか。答えは一つ、企業が利益追求のための経済的機能組織であるという事実を忘れないことだ。そして、そのためには思い切った人材登用が必要となろう。日米経済摩擦が極限に近づきつつある現在、企業が生き残って行く上で何をなすべきか、連合艦隊の完膚なきまでの敗北は、実に多くの教訓を残しているように思えてならない。」

    この一文と14年後の今日はどうでしょうか?金融業は続々と日本に上陸し、日本の製造業は一部の業界と企業を除き昔ほど元気がありません。

    今回、縁あって文献2を読みました。小生の頭のなかでは文献2の内容と上記の事柄が自然に融合してギクッとなって表題の疑問となったわけです。

  4. 弁明(3):あなたはどのクラス?
    おおよそ、現今の製造業に関わる人達の考えは次の2クラスに分類できると思います。

    Aクラス:現在の製造業に元気がないのは金融問題が原因で、これが解決できれば自然と昔のような元気が出る。

    Bクラス:現在の製造業に元気がないのは金融問題以外も原因で、これが解決できないため元気が出ない。

    小生はこの不況期の初めはAクラスでしたが、不況が長引くにつれ徐々にBクラスに近づき、最近はBクラスの人間です。

    文献2には元気のない製造業を立ち直らせる方法が記載されていました。このため、Bクラスの小生は頭の中で自然発酵して表題の疑問となったわけです。(追伸:Bクラスの人に贈るノ文献4の第2巻第8章には元気のない製造業が種々の知恵を絞っても上手くいかず(機能組織の変更)、最後にTOCを縦糸に、日本式の製造術を横糸にして徐々に業績を回復し、最後は役員・従業員(および学者も入っていたと思う)の全員参加で元気のある会社に変身する模様が約40頁に亘り記載されています。一読をお薦めします…)

文献1:堺屋太一、江坂彰、長谷川慶太郎ほか著「連合艦隊の蹉跌(今、改めて問われる日本型組織の限界)」1987年 プレジデント社発行 一章│日本海軍とは何だったのかノ堺屋太一著の25頁より転載。
文献2:小林英三著制約理論(TOC)についてのノート2000年 ラッセル社発行
文献3:コックス、スペンサー著小林英三訳 制約管理ハンドブック 1999年ラッセル社発行
文献4:スリカンス、アンブル著 小林英三訳 シンクロナス・マネジメント2001年ラッセル社発行

[整理No.001] 投稿 小山太一(2001.5.12)

はじめまして、小山太一と申します。

私は、現在情報産業で製造関係のお客様を対象として、生産関連の情報システムのコンサルティングとシステムインテグレーションをやっております。一昨年より、半導体製造装置メーカーの生産管理システムの革新プロジェクトに携わっております。また、中小企業診断士として独立コンサルタントと交流するとともに製造業関連の研究会で研鑽を積んでおります。

さて、小林さんのTOC関連の著書は、

  • 制約管理ハンドブック
  • 制約理論についてのノート
  • シンクロナス・マネジメント

について読ませて頂き、大変参考にさせて頂きました。ありがとうございました。とくに、最新刊のシンクロナス・マネジメントでは、DBRに関してかなり突っ込んだ議論がなされており、大変勉強になりました。

また、TOC特にDBRについての詳細が知りたいと思い、ゴールドラットの

  • THE GOAL
  • THE HAYSTACK SYNDROME

も拙い英語力で目を通しました。私の乏しい理解でも、おそらくTOCは大変優れた思想であるのだろうと考えております。

「何故、日本でTOCが広まらないか?」について私なりに、考えていることを述べたいと思いますので、是非ご意見いただければと存じます。

まず、第一に、日本ではまだまだ、TOCについて正確に伝わっていないということです。日本の製造業に従事される実務家の方々にまだまだ、浸透していないように思います。TOCは単にスケジューリング技法だけでなくスループット会計、思考プロセスを含んだ総合的な製造業の経営改革のためのマネジメントシステムであろうと思います。

確かにその通りであるとは思うのですが、製造業の実際のシステムを開発する立場からすると、まずは、DBRです。

いくら壮大な体系を言われても、TOCの根幹たるDBRが本当にJITでもまれてきた日本の製造業で役に立つスケジューリング技法であることを明確に伝えない限り日本でのTOCの普及は急には進まないように思います。

私のこれまでのごく限られた知識から判断しても、思想としてのTOCは大変素晴らしい物であるように感じております。しかし、現時点ではDBRをまだ理解してはおりません。

特に以下の点が不明です。

  • 制約であることの判断基準
  • 複数制約がある時のその間の矛盾の解消の考え方、およびそのアルゴリズム
  • DBRではまず制約のスケジューリングを確定させたのち投入工程でのスケジュールを決定する物と理解しておりますが、このような非制約工程でのスケジューリングは投入工程だけでよいのか?その他の非制約工程はスケジューリングせずに本当に上手くいくのか?

これまで、TOCでの文献では制約資源のスケジューリングに焦点が当たっているように思いますが、JITでもまれた日本の製造業でボトルネック資源が遊んでいるのをボーと眺めているような企業は日本ではないと思います。(確かに不完全ではあるでしょうが)したがって、制約工程を見つけ使い切る事を強調しても、それはすでに実施されていることであってピンとこないと思います。

タイムバッファーを生み出すのはロープの張り方であり、非制約工程の在庫を削減するのもロープの張り方にあることから考えるとTOCの神髄は、ロープの張り方にあるのではないかと思うのです。しかし、残念ながら私も、そのレベルまでにはDBRの理解は進んでおりません。TOCが日本に紹介されて4年ぐらい経っていると思いますが、TOCの最新のセミナー等でも、いまだにTOCとはなんぞが中心の講演がほとんどであるように思います。

小林さんは、MAPICS社のスループットを拡販するお仕事をされていると思いますが私は、スループットがDBRの実装をどのような形で行っているのか、またアメリカで導入済みの企業がどのようにそれを運用して実効をあげているのか大変興味を持っております。もう、抽象的な啓蒙の時期は過ぎていると思います。思想を100万言かけて説明するより、スループットでの具体的なスケジューリング手法とその実例を淡々と説明すれば、賢明な製造の実務家は理解すると思うのですが。

このようなセミナーを設けていただければ是非参加させて頂きたいと思います。

色々と初対面で勝手な事ばかり書き申し訳ありません。もしも、小林さんの貴重なご経験からアドバイス頂けましたら幸甚です。宜しくお願いいたします。

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